他作品

□言いそこねた言葉@田中視点
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昼休み。

ダチとぎゃいぎゃい騒ぎながら飯を食っていると、どこかから名前を呼ばれる。

何だと思い声の方に目をやると、教室の扉の向こうに、大地さんが立っていた。



「ちょっと抜ける、先食っててくれ!」



一緒に飯食ってた奴らに声を掛けて、小走りで扉まで行く。



「大地さん?何かあったんスか?」



純粋に疑問を投げかける。

大地さんが俺のクラスに来るなんて、すげー珍しいことだ。

黙って質問の答えを待っていると、大地さんは申し訳なさそうに口を開く。



「いやー、今日の部活中止にしようと思ってな。連絡しに来たんだ」



「は!?中止!?」



つい叫んでしまうと、遅れてスガさんも顔を出した。

2人してバレー部の奴らんとこ回ってんのか…。



「ほら、今日暑いだろ?」



スガさんがにこやかに聞いてくる。

確かに、今日はめちゃくちゃ暑い。

教室ん中でも、机に突っ伏してるヤツが大半だ。

そしてついでに俺も暑苦しそうな目で見られる。



「…と、いうことで熱中症になる奴らがでないように、一日休憩することにしたんだ」



大地さんが、俺の教室をチラと覗いてから言葉を続ける。

…まぁ、妥当だよな。

これでぶっ倒れるヤツが出たらまた教頭に何を言われるか…。



「…自主練はいいんスか?」



正直部活がないってのは落ち着かない。

一人ででも、体育館で練習がしたい。

…あいつも、来るかもしれねぇし。



「あぁ、別に禁止はしない。但し、倒れないようにな」



大地さんは俺の気持ちを理解してくれたようだ。

笑って許してくれる。



「そこは大丈夫っス!!」



「はは、そっか。…がんばれよ」



スガさんが最後に意味深な言葉を残して、2人は去っていった。



「…頑張れって、練習をか…?」



首を捻るが、当然答えは出てこない。

扉の前で突っ立っていたら、後ろから呼ばれた。

それに返事をして席に戻ると、その疑問は気がつけば忘れていた。






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