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□不浄の金糸雀
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Side Mayu
「ふぅ…ここはもういいかな…」
長い廊下に張られた延々と続く窓ガラスを
1枚づつ丁寧に磨き終えたところで、
額の汗をメイド服の袖で軽く拭う…
やっと1階の窓を全部拭き終わったから、次は2階に移動して…
あっでもそろそろ昼食の用意をする時間になるから
少し早めに厨房に向かった方がいいかも…
午後からはお洗濯とお庭のお手入れと……
うーん…2階の窓拭きを終えるのは一体いつになるんだろう;
…まぁ、やることはたくさんあって大変だけど
ここのお給料はかなり魅力的だし…
それに見合う働きができるように頑張らないと!
「あっ…!!;」
バシャーン!
そう意気込んで、バケツの水を変えようと
持ち手を掴んで立ち上がろうとした瞬間、
足がもつれてしまい、バケツの中の水を
勢いよく廊下に溢してしまった……
ど、どうしよう;
もしこんなところ見つかったら
また厳しくされちゃうのにっ;
とにかく急いで拭いて……
「…麻友?」
「ひぅ!;」
おろおろとその場で足踏みをしながら考えを巡らせ
とにかく一刻も早く証拠を隠滅しようと雑巾を手に取ると
背後から静かに名前を呼ばれ、思わず小さく悲鳴を上げる…
「廊下を水浸しにして、何してるの?」
「も、申し訳ありません麻里子様!;」
慌てて振り向いて頭を下げてから
表情を伺おうとそっと目を開けると、
麻友の雇い主…もといご主人様である方は
端正なお顔を明らかに曇らせていらっしゃる…
まさかこんなに呆気なく見つかってしまうなんて…;
今日はなんて運が悪いんだろう……
「廊下の水拭きなんて頼んでなかったと思うけど?
それもこんな豪快に」
「え、えっとこれは…
その…つまずいた拍子に……
バケツの水を溢してしまって……」
しどろもどろにそう言うと、
麻友に目線を合わせるように腰を曲げた麻里子様は
ゆっくりと口角を上げる…
「そう…つまり麻友は今日も"粗相"をしたっていうこと?」
「申し訳ございません……///」
「粗相をしたメイドはどうなるんだった?」
「お、お仕置きを…お願いします…麻里子様……///」