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□不器用
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あぁ
もう14時か…
コーヒーの時間だ。
そう思い柚は手にしていた書類をデスクに置きコーヒーを入れ始める。
カップの受け皿に毎回一粒のブラックチョコを添えて。
(まぁ未だかつて食べてもらった事ないけどね…)
ーーーコンコン
いつもの時間にいつも通りノックをする
「失礼します。」
…………
カタカタカタカタ
彼はいつも無言で私を迎える
PCからは目を離すことなく。
「社長、コーヒーお持ちしました。」
カタカタカタカタ
いつも眉間に皺をよせながら画面を見つめている
(逆に疲れないのかな…)
交わす言葉はいつもない。
「失礼しました。」
ドアノブに手をかけようとした時
『お前はいつもなぜコレを置くんだ?』
え?
そう思い振り返るとチョコを摘まみながら自分に問いかけられてると認識した。
「えっ…と。チョコは疲れにいいと思いまして…」
『俺は甘いのは苦手だと知って?』
「あ、ぶ、ブラックなんでそこまで甘くないかと…」
『…………………』
(む、無言はやめてよ〜;;)
目が泳いでいる私を見る事なく峯はチョコを口に入れた。
(え!!!!!?あ、あの社長がっっっ!?)
『持ってきておいてその顔はなんだ。』
ビックリし過ぎて口が開く柚
「すっすみませんっ!」
『…やっぱり甘い。』
「え………」
『そもそもカカオ100%でないなら甘いんだぞ。』
「そ、そうなんですか…」
『もういい。』
下がれと目で合図する峯
(怒らせたーーーーーー;;)
それから夕方までは気が気ではなかった
幸い定時前に峯は東条会本部に出向かなくてはならないのでコーヒーカップを下げる時には社長室にはいなかった。
(もう明日チョコ置くのやめよ…)
そう思いながら空のカップを手にすると
受け皿に一粒のチョコが。
(あれ?…社長食べてたよね?)
よく見るとチョコ自体に"milk"と書かれていた
(これって……)
(社長が…自分で?)
あの強面でぶっきらぼうな人がチョコを選んでいたのかと思うと
「………ふふふふ///」
柚は嬉しそうにチョコを口に放り込んだ
「チョコは甘いのが好きだな★」
翌日もいつもの時間にいつもの場所にコーヒーを運ぶ
カカオ90%のチョコと共に…
ーーー10%はワタシの気持ち