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□俺たち
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その日もアントーニョは内職に追われていた。
強かったあの頃のスペインはどこへいってしまったのだろう。
返り血の似合っていたあの頃。
今は造花のカーネーションの赤がよく似合う。
花びらを作り一つまた一つと作っていくがさすがにしんどくなってきた。
いくら貧乏で生活のためといってもこう毎日造花を作っているとやめたくなってくる。
「あー!あかん!もうしんどいわー」
持っていた造花をぽいっと投げ椅子にもたれかかる。
すると椅子に別の力がかかりますますそれた。
「トーニョ!大丈夫?」
「しょぼくれてんな!俺様の作ったホットケーキでも食べて元気出せよ!ケセセセ」
そこにいたのは悪友のフランシスとギルベルトだった。
「フランーギルー(泣)もう俺しんどいわー」
そう言ってフランシスに抱きつく。
「相変わらず貧乏なのね…せっかく遊びにきたのに…あっ!そうだ。俺たちも手伝うよ。ギルちゃんいいよね?」
「ケセセセ俺様ははじめからそのつもりだったぜ!」
悪友からのまさかの提案に涙ぐむアントーニョ。
「おまえら…っ!親分ほんま嬉しい!」
「で?何個作ればいいの?」
「この段ボール6箱分」
そこには造花が半分くらい入った段ボールがあった。
「え?いつまで?」
「明日の朝(泣)」
フランシスは、はぁーっとため息をつきアントーニョのおでこにデコピンをした。
「もう…トーニョはいつもそうなんだから!お馬鹿さん!しょうがないやるよー」
「任せとけ!終わったら皆でビールな!」
「お兄さんワインがいいな♪」
「俺もー!」
「おまえらいつもそうだよな…」
こうして翌朝まで造花づくりは続いた。