【Not Joke】
□For The Mission
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『…それではお待ちかねのミュージックコーナーです。
今回は、ペンネーム、アライグマさんからリクエストで、Mr. Misterの“Kyrie”をお送りいたします。
どうぞ、お聞きください』
その瞬間、目が覚めた。
爽やかな朝の日差しに、爽やかな音楽。
あんなことがあったからか夢見は最悪だったし、備え付けのラジオを跨いだ横のベットにはヒゲの男が寝ているけど、
次の瞬間には気にならなくなっていた。
直ぐにベットを出て、洗面所に向かう。
朝の支度を終えて部屋に戻ると、ダンテはまだ眠っていた。
目覚ましのラジオも、奴には効かないらしい。
伝説と呼ばれるほど腕の立つデビルハンターだが、こんな無精な一面を見ると、やっぱりただのおっさんなんじゃないかと思ってしまう。
コートを羽織り、ラジオを止める。
「ダンテ」
起きろ。
と呼びかけるが、ん゛〜とか嫌そうに唸って枕に顔を埋める。
起きない気満々らしいので、ネロは諦めた。
「ちょっと出てくる。
朝飯になるようなもん、なんか買ってこようか?」
ダンテの返答は、やはり「ん。」だった。
ん。では、是が非か分からない。
まず、ネロの言葉を理解できているのか。
少々呆れてため息をついてから、部屋を出た。
出てくる、の理由というは、他でもなくキリエへの連絡である。
駅まで来ると、期待通り電話ボックスが並んでいた。
その一つに入り、番号を押す。
タブレット端末は持っていたが、電池が少なかったので、敢えて使わなかった。
コール音が2、3回鳴って、出る。
「もしもし、キリエ?」
聞き覚えのある声に、相手は息を飲んで
『ネロ…!よかった…!
連絡がないから心配で…何かあったの?』
喜びと不安の入り交じった声だった。
ネロは、かいつまんで昨日あったことを―虚実織り混ぜつつ―話す。
真実を全て話せば、キリエはもっと不安に晒されることになると考えての事だった。
「…だから、暫くダンテといることになった」
『…そう。
ダンテさんが一人で倒せない悪魔なんて…』
本当は自分の命が狙われていて、間違えたら一年前の事件が再来する…などとは言えなかった。
架空の悪魔を恐れるキリエに、ネロは言って聞かせる。
「必ず、そいつを倒すよ。
君や、君のいる町に何もさせない。
…約束する。」
『ネロ…』
キリエは、迷うように黙ってから
『…私、あなたが心配だわ。
…お願い。必ず無事に帰ってきて』
小さく震える声に、胸が痛む。
嘘をついていることもそうだが、最悪の場合を考えて、ネロ自身も不安になった。
しかしながら、弱音を吐くつもりはなかった。
「ああ。絶対だ」
ネロの言葉を信じる彼女に、内心では、側にいてやりたい気持ちと、それが叶わない現状にやきもきしていた。