【Not Joke】

□The Man Has Come
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派手な赤いコートに、自分と同じ青い目と銀髪。

ふてぶてしく笑った口元に生えている無精ひげ。

状況が状況だからか、一年ぶりの再開に感動する言葉は思い浮かばなかった。

「こんな時に何だよ」

憎まれ口を叩くと、ダンテは笑ってヘルメットを投げ渡してくる。

「こんな時だからの用だ。
乗んな。道すがら話したいことがある」

勢い受け取ったが、なんとなく被りたくなくてヘルメットのやり場に迷う。

と、ダンテが

「急いだ方がいいぜ?」

今度は向かって来ようとしている騎士達を顎で示す。

ネロは少し躊躇ったが、少しの抵抗に、その方へヘルメットを左手でぶん投げた。

先頭の一名が、戸惑いつつも、ドッヂボールの内野みたいにナイスキャッチして、事なきを得る。

これを見届けてから、ため息混じりに

「一体何が楽しくて、おっさんと二人乗りしなきゃなんないんだか…」

「何か言ったか?」

「いや。何も」

ダンテの後ろの座席に跨がり、いやいや背中にしがみつく。

直後、猛スピードで、バイクは発進した。



「…それで。どんな理由があって来たんだ?
単に、助けに来てくれたって訳でもないんだろ」

ダンテは鼻で笑う。

「相変わらず生意気だな。
でも、確かにその通りだ。
じゃなきゃ、高い交通費出してまでこんな田舎に来ない」

やはり、一年経っても口の憎さはネロに負けていない。

「一人じゃ倒せそうにない悪魔でも出たのか?」

嫌味を返したつもりだが、ダンテはなんでもないように

「いい発想力だな。でも違う。
大体、俺に倒せない悪魔なんかいないね。伝説のデビルハンターだからな。
いたとしても、わざわざ坊やに協力して貰わなくても…」

前方の道は、門が塞いでいる。

自警団の根回しだろう。

たが次の瞬間、固く閉ざされていた扉が爆発と共にあっけなくふっ飛ぶ。

煙の中を、バイクは何でもないように通っていった。

「物好きな女がいるんでね」

硝煙を辿ると、建物の上にバズーカを持った女性が立っているのが見えた。

彼女がその物好きな女らしい。

女性である上、ダンテのような特別な血筋でもなさそうだが、その道のプロであることは遠目からでも伺えた。

確かに、技量はネロよりも上だろう。

では、一体何の目的が…

「お前ここんとこ、悪魔に俺と間違えられてたりとかしなかったか?」

…何故分かったのか。

驚いたが、相手は伝説の魔剣士の息子。

どんな裏技が使えても不思議ではない、とネロは無理矢理納得した。

「ああ…。何か関係あるのか」

「大アリだ」

ダンテは、ちらとバックミラーを見てから、バイクを加速させる。

予測はしていたが追っ手が来ていた。

「一年前の事件じゃ、ここの教皇が地獄門とかあの変な石像のために、魔具とか坊やとか集めてたろ?」

「いや、知らねーよ」

そういえば、顎の凄い変な男の話に、“地獄門”と“魔具”の話は出てきた気がするが、ちゃんと聞いていなかったので、はっきりは分からない。

そもそも、ネロにはコレクションみたいに集められた覚えはない。

ダンテは一瞬、困ったような間をつくってから

「…じゃ、ま、いいや。その話はちょいと置いといて…。
ある人物とその組織が、より強い魔力を持った連中を集めてるって話があってな。
お前が会った悪魔は勿論。フォルトゥナ含め、各地に設置された自警団は、その傘下…って言うよりも、そいつらの一員らしい」

あの高圧的な“自警”も自称“粛清”も、そのため、ということなのだろうか。

納得のいかないところだが、それ以上に気になることがことがいくつかあった。

「…魔力?」

「そう、悪魔なんかが持ってる不思議パワーだ。
俺やお前の身体能力が人並み外れてるのも、傷が直ぐ治るのも、魔力があるお陰だ」

そんなことくらい分かっている。

というか不思議パワーって…もっと他に言い方あったろうに。

…どうでもいいことだが。

重要なのは、なぜその人物と組織とやらは、フォルトゥナなどといった辺境の地に目をつけたのかということだ。

…答えは明白だった。



「奴等は、より強力な魔力を持つ悪魔、スパーダの血を引く者を捜してる。
つまり、俺とお前だよ」



 
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