【short story】

□Scarecrow
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夕食の席で始めてそれの視線を感じた。

顔をあげて思わず手を止める。

階段の手摺側の壁に置かれた人形が、こっちを向いていた。

赤い石が嵌め込まれた目と、三日月形に裂けた口が無性に不気味だった。

あんまり気味が悪いもんだから、席を立って顔を向こうにやったら、いつの間にかまたこちらを向いていた。

折角ネロが作ってくれたカチャトーラなのに、あれが気になって全然味わえなかった。

ムカつく。




テレビを見ていたら、またおんなじ視線を感じた。

向こうに向けてまた直っていたら、更に気味悪い思いをしなくちゃなんないので、タオルケットを頭から被せてやる。

これでやっと落ち着けると思ったら、ドサッって音がして、タオルケットが下に落ちていた。

ホントになんなんだよ、もう。




ここのところずっと見られてる気がする。

俺だけじゃなくてみんなだって見られてるハズなのに、どうやら気づいてないらしい。

飯の席で話したら、考えすぎだと言われた。

バージルなんか、呆れて溜め息しか出ないみたいで、会話にも参加しない。

ネロはただ黙っていた。




朝起きたらネロがいなかった。

二代目とバージルに聞いても知らないと言う。

依頼でもないらしい。

フォルトゥナに帰ったんじゃねーのかとかオッサンが言ってたけど、ネロは、何も知らさず置き手紙もなく出ていっちまうような薄情な奴じゃない。

しかも、朝食の支度がやりかけだった。

どこへ行っちまったんだ?

あの人形が笑いながらこっちを見ていた。




 
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