☆Show time☆

□COLORS
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午前1時26分。

マンションの12階で、ある男が殺された。

男は、何の変哲もない普通のサラリーマンだったが、ある事件の重要参考人であった。

死因は感電死。

帰宅した時“襲われた”ものかと思われる。

当然スタンガンなどで、眼球が焼けるほどの電圧を人体に流し続けられる訳がない。

凶器は分かっていた。

犯人そのものだ。

1「見つけたぜ」

捜査開始から27時間。

事件発生から36時間が経過しようとしていた。

目の前にいる男は、シド・ゲラーといった。

ボロいアパートに住む、駅の清掃員だ。

シドは彼に気付くと、掃除用具を放り投げ、走り出した。

プラットホームに行き交う人々を押し退け、改札に向かう。

彼はそれを追いながら、耳元の通信機に声を入れる。

1「こちらクリムゾン。犯人は計画通り駅を出た。回り込んでくれ」

3『こちらバーミリオン。出たってどこ?北口?』

1「この駅には北口しかないだろう。
コバルトとストロベリーは?」

3『ああ…。オッサンは喉乾いたとかで、スタバにドリンク買いに行って、コバルトは飽きたっつって帰った』

1「つまり?」

3『あいにく俺だけ』

まさかの事態に頭を抱える。

その時、不意にシドが手を後ろに突きだした。

突如、青く光る電撃がほとばしり、彼に直撃する。

彼は後方に吹っ飛ばされ、壁に打ち付けられた。

3『何かデカい音したけど、大丈夫か?』

能天気な声が聞こえる。

まだしびれる脚を懸命に立たせながら、逃げていくシドを目で追った。

1「呼び戻せ、あいつらの力が必要だ」

3『相手は一人なんだろ?俺だけで平気だって』

1「バカ野郎…。能力には相性ってもんがあんだよ」

言って通信を切ると、まだ煙の上がっている服をはたいて立ち上がる。

どこか切ったのか、額からは血が流れていた。

「あのこれ…」

いつの間にか目の前にいた女性が、にこやかにハンカチを手渡す。

彼は快くそれを受け取って

1「ありがとな。今度返すよ」

言って、頭にそれを押し当てながら、シドの後を追った。







1「待て!」

彼がシドに追いついた時、シドの前には、彼より若い男が道を塞ぐように仁王立っていた。

1「あいつら呼んどけって言ったろう!」

3「それなら、さっき電話したからすぐ来るはずだ。
その間暇だしな」

飄々と言ってのけ、彼―バーミリオンはシドに向き直る。

シドの身体から電流がほとばしり、突き出した腕から、電流が光線のように放たれた。

しかしバーミリオンは、それを見切ったように身をかっし、完璧に避けきった。

3「こんなもんか?」

不敵に笑って、砂もついてないのにコートを払う。

敵わないと思い、シドは脇をすり抜けようとしたが、バーミリオンは脚を引っ掻け、そのまま地面に押さえつけた。

それから特殊な素材で出来た手錠をシドに掛ける。

3「こいつには、あんたが使ってるみたいな変な能力を抑える効果がある。
もう電流は出せないぜ」

その効果は確かなようで、シドは呻いているだけであった。

3「案外チョロかったな」

皮肉っぽく言われ、少々ムカッと来たが、それはすぐに注意を促す声に変わった。

1「後ろだ!!」

振り返った先には、黒のワゴン車が横回転しながらこちらに迫ってきていた。

3「うおっ!!」

身体をひねって、ギリギリで避けきった。

ワゴン車は、そのまま駅の入口に激突した。

1「無事か!?」

駆け寄ってきた彼に、バーミリオンは苦々しく返した。

3「ああ。俺は、大丈夫だったけど…」

見下ろす。

地面に倒れたままのシドは、頭が潰れていた。

助からないことは、目に見えていた。

3「全く、誰の仕業だ」

クリムゾンは、ワゴン車が飛んできた方向の道に目を向ける。

その時確かに人だかりの向こうに、逃げていく不審な人影を見た…。


 
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