【Not Joke】

□Hell Gate
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悪魔が人間界に邪を及ぼすため、人間の心を弄ぶように、人間が悪魔の力を利用しようとすることも間々ある。

黒魔術や邪神信仰がそれに似たようなものだろうが、ここまで現実離れしたケースは稀だ。

悪魔の力を使って、神になりかわろうと目論んだ教祖がいた。

教祖の力だけでは、当然、あのような事には至らなかっただろう。

むしろ、偏執的、妄執的なまでの協力者がいたからこそ、災害とも呼べる大事件に発展した。

その協力者とは、言うまでもなく、目の前で、優位そうに立っている男で

「テメェ…まだ生きてやがったとは…。
全部テメーの差し金か?!」

アグナスと名乗った男は、ぶつぶつと独り言を交えながら、不機嫌そうに言う。

「私は、あくまで一協力者に過ぎない。
発明品をどう扱うかは、ここのCEOである、アリウス氏が決定する。
アリウス氏は素晴らしい…。
一年前、ダンテに殺されかけた私を匿い、さらには、専用の研究施設まで与えてくださった。
私が、生涯を賭して、悪魔の研究に身を捧げられるように…」

ネロには、この狂人が何故生きてられたかなど、興味のないことだった。

変わらない無愛想な表情で

「どこの誰だろうが関係ねーよ。
フォルトゥナの二の舞になりたいようならな」

闘志をむき出しに、皮肉を返す。

奴は、怒り、声を張り上げると思ったが、

「…ああ、貴様のような軽薄な奴には分かるまい。
今回の計画は、あの時のものとは比べ物にならないほど、壮大で崇高なものだ。
そのためのプロセスもな。」

「どういう意味だ」

ネロの言及に、アグナスは、少なからず黙っていようとした広言を、口にしてしまった。

「…我々が、ただ悪魔を、召喚するためだけに、アレを作っていると思うのか?
才のある者は、前回の失敗を省みず、同等のことを繰り返しはしない。
分かるか?小僧。
魔具の力で、人間界と魔界をつなぐことができるなら、つなぐ魔界の時間軸すらも、思うままにできるのだよ。
アリウス氏は、その仮説を誰よりも早く発見された」

ネロは鼻で笑った。

「それが何だ。死に別れた母親の顔でも拝もうってか?」

軽口をたたいたつもりだが、自己の世界に陶酔している科学者には、応えていないようだった。

「…遥か昔、魔界には、全ての悪魔の力を統べる存在があった。
魔帝と恐れられていた悪魔のことだ。
究極にして、原点である、最強の存在。
それを現世に呼び戻し、その力を手中にすることができたとしたら…。
神をも上回る存在になれると思わないか?」

ようやく、奴らの企みの全貌が見えた気がした。

それでも、ネロが然程危機感を覚えないのには、大きな理由があった。

「そいつなら大昔にスパーダに倒された。その血を引く者もまだいる」

だが、相対する狂科学者は、尚も不敵に笑った。


「奇跡はそう何度も起こることではない」


異様に癇に障る言い草に、負けじと言い放った。

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。
あんたの、その、くだらねー計画が成功すること自体、奇跡みたいなもんだろ」

不敵な笑みが、不快だと言うように醜く歪む。

何度か投げつけた憎まれ口が、ようやく届いたようだった。

「フン、いつまでその戯言がつづくか…。試させてもらおう」

アグナスが手を掲げると、再び、水槽の開く音と共に、複数の悪魔が現れる。

今までのものと比べ、体躯が大きく、凶悪そうだった。

「いいぜ…。ストックが尽きたら、テメーの番だ」

好戦的に言い放って、襲いかかってきた悪魔に、レッドクイーンを向けた。


 
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