【Not Joke】

□The Force of Destiny
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一張羅の赤のコート。

身ぐるみを剥がされる事はなかったが、武器や私物と一緒に、奴らに没収された。

正直ダンテにとって、武器云々なんて、今までに何度か質に出しているくらいだから、没収されるくらいワケなかった。

…ではないが、あとで奪い返せると自負している。

だが、トレードマークのコートを奪われるとなると、途端にモチベーションが下がってくる。

収容所の一室に押し込められても、抵抗しなかったのは、奴らの言うように、観念していたからではない。

「逃げ出そうなどとは考えるなよ」

鉄格子が閉まって、そんな声を投げられたが、ダンテはついに無言を返した。

深いため息をついてうなだれる。

ここまで来たはいいが、どうやって、この牢屋から抜け出すかだ。

連中の勝手好きに試作機を使われる前に、こちらが先手を打てないものか。

あの様子では、ネロが魔界に連れて行かれたのは明白だ。

何とかして、ネロだけを引っ張り出したいところだが、今のところ、ダンテにはどう頭を捻ってもいい考えは浮かばなかった。

仕方ないので、疲れてるし、と言うことで、備え付けの粗末なベットに足を組んで横になったのが、多分3時間前。

横の壁を軽く叩く音に、眠りから覚めた。


「……もし。ワシの声が聞こえるかね?」


老年の男性と言ったところか。

無下にするのは夢見が悪い気がした。

「ああ。聞こえてるぜ。あんたも奴らに連れてこられたのか」

老人は、かすかにため息をつくと、渇いた声で。

「あんたが来る前日にな。
…ワシは、ただの身よりのない老いぼれじゃ。悪魔なんかではないと、何度も言ったんだがな。
連中は全く聞き耳を持たん。
ワシが、人間であることが証明されれば、ここから出してくれるといっとったんじゃが、一向に、その兆候はなくてなぁ…。」

例の自警団の騎士たちのことだが、その正体は、ネロを連れ出す時に判明していた。

連中の大半は人間を騙った悪魔だ。

本物の人間の騎士たちは、連中の正体に気付かずに、無意識の内に、悪魔に毒されてしまっている。

常識では考えられないことも、公然とやってのけられるのは、人間としての良心が、悪魔の手によって麻痺させられているからだろう。

…そうだと思いたい。

「…災難だな」

老人は、ダンテの励ましともとれる言葉を、軽く笑いつけた。

「…全くだ。
ワシの事じゃない。あんたのことだよ、お若いの。」

「若い、ねぇ。最近全く言われなくなった言葉だが」

「ワシなぞに比べたら、お前さんはまだまだ若い。
のう、スパーダの息子よ」

この言葉に、ダンテは内心驚いてはいたが、

「気付いてたのか」

「連中が大声で話しとったからな」

「大したじいさんだぜ。恨みごとでも吐こうってのか?」

この返しに、老人は笑いだした。

何がおかしいのか疑問だったが。

「まさか。あのお方は、この世界を守った英雄だよ。
連中が可笑しなことを触れまわってから、誤解する人間が増えたがね」

「所詮悪魔だろ。疑わないのか?」

ダンテのつき離すような言い方にも、老人は穏やかだった。

「悪魔だろうと、人間だろうと、変わりゃせんよ。
本質的な物が良いか悪いかより、行った行動に仁義があれば、人はそれを崇拝する。
スパーダは、この世界を悪魔の破壊から守った」

「実際に見たかのような言い方だな」

老人は再び笑いだした。

それから、数回むせった咳をして

「まさか、そんなに長生きは出来んよ。
さっきも言ったが、ワシはただの人間なんでな。
見たわけではないが、スパーダが高尚な精神を持っていたことは、確信しておる。
そして、その精神が、息子に受け継がれていることもな」

思わぬ場所でのファンの獲得に、ダンテは居心地悪そうに後ろ頭を掻きながら。

「あー…じいさん。ありがたいんだがね。高尚だなんて言い方はやめてくれよ。
そういうガラじゃないんでね」

その次の瞬間にだった。

鉄格子が、電子音と共に、突然開いた。


 
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