【Not Joke】

□Personal Enemy
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魔帝ムンドゥス。

人間界に恐慌をもたらそうとした、最悪の悪魔。

母と兄の仇。

それを討ち倒したのが、数日前の事。

現相棒の彼女が、景気よくブチ壊した事務所の諸々も、ようやく修繕を終え、今に至る。

ふと、何日かぶりの電話の音がして、机の上で暇を持て余していた彼女がそれをとった。

「デビルネヴァークライ」

修繕のついでに、相棒の勧めで事務所の名前を変えてみたのだが、不慣れなためか、なんとなくこそばゆい。

「合い言葉つきの依頼よ」

待っていた本命の依頼に、仕事道具をそろえ、事務所のドアを蹴破る。

「場所は」

返す彼女も、直したばかりのドアの事など、気にも留めていないようだった。

「スラムのはずれにある、あの遺跡よ。
なんでも、普通とは違う悪魔が、最近出没しているらしいわ」

「普通とは違うって?」

意味深な言葉に、彼女は口元だけで笑う。

「話によると、人間の姿に近い悪魔だそうよ。
突然現れて、遺跡の観光客や、見回りの人間を襲っているらしいわ。
もしかしたら、あなたと同じように、悪魔と人間の血を持つ者かもしれないわね」

「笑えないな」

無愛想に言って先を進む。

そんな後ろ姿に、彼女は気に病むように投げかけた。

「ダンテ」

悪魔らしからぬ彼女の様子に、ダンテは振り返って言ってやる。

「何してんだ。置いて行くぞ」

気にもしていない風に笑って言うのに、彼女も微笑を返した。








道連れなのだろうと思った。

見た目通り、性格の悪い悪魔だ。

身体を締めあげられながら、ネロは、胸の内で口汚く罵りまくった。

危機に直面した精神が、闘志を掻きたてる。

魔力の昂りを解放し、悪魔の手から逃れた。

反撃される前に、今まで耐えてきた激情の全てを、構えた刀身に込める。

「失せろ!!!!」

醜い顔面に、青い斬撃を飛ばす。

十字型のそれは、凄まじいスピードを伴って、悪魔に直撃した。


〔グオオオオォ〕


力尽きたようにうめき声を上げ、その悪魔は塵となって消えた。

呆気ないように感じたが、先のダンテとの戦いで、すでに瀕死の状態だったからだろう。

ネロはほんの少しだけ、ダンテを見直した。

だが、危機が去ったわけではなかった。

図体のでかい悪魔が、視界を遮っていたからか。

ネロは、その瞬間まで気がつかなかった。

すぐ正面にあった、白く開けた光。

その先がどこに繋がっているかなど、考えるまでもなかった。


…ヤバい。


分かってはいたが、抗える術はなかった。

引力に従って、体は光の向こうへと引き込まれていった。



 
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