命さへ

□残り香
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憎い。



何も考えず、のうのうと俺の目の前を歩いてるあいつが憎い。

何であんたはそう馬鹿なんだい?

俺にいつ殺されるか知らねぇってのに。

あんたは俺の事まで馬鹿にして。


頼むから、俺の前で笑って見せるな。

俺に笑いかけるな。


その馬鹿面、潰してやりたいよ。


あんたが笑う度に。

俺の中にある憎しみと怒りが沸々と沸き起こる。


隙あれば、殺してやる。


何度も何度も自分の中でそう繰り返した。

耳許で囁かれればあんたの喉を潰し、唇が重なれば噛み切って、舌が絡み合えば食い千切ってやりたい。

と、何度思った事か。


やけに色のある声で名前を呼ばれる度に


じんわりとした鈍い痛みと身震いが生じる。


俺を貫く様な、その真っ直ぐな瞳が憎い。

自信に満ち溢れた堂々とした態度が気に食わない。

人をおちょくる様な喋り方が一々勘に障し、

両腕にびっしりと敷き詰められた、主張の激しい刺青が凄く目障りで。

堪ったもんじゃないよ。

それに。何が一番厭かって言うと。




言うと..


..あの煩い鈴の音が、耳障りだ。

耳鳴りが、頭痛がする程に。吐き気を催す程に。


俺は、あの鈴の音が、一番、一番…


「..嫌いだよ。」
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