秘密の二人

□転機の非番
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薫は私の代わりに新選組隊士の入隊試験を受けに行き、見事合格…無事に新選組内に潜入を果たした。
だけど朝も早く(朝というか寧ろ夜中)に出掛けていき、夜も遅くに帰ってくる…そんな毎日がずっと続くと流石に私は心配でたまらなくなってきた。あまりの激務に本来の目的どころでは今はなさそうだ。
屯所の近くに家を借りれたけれど、通いじゃなくて住み込みで潜入した方が僅かでも今よりゆっくり休めるんじゃないだろうか?
そう言ったけど、薫は家に帰って私を見ないと心配で落ち着かないから住み込みは絶対に嫌だと頑なに言った。


「ねぇ薫、明日は初めてのお休みの日なんだよね?」
「あぁ…でも俺の上司がすげえ意地悪で…“明日は非番だけど新入りにそんな休息なんて必要ないよね?明日は庭の落ち葉の掃除、屯所の掃除、溜まった洗濯物の洗濯…やることいっぱいあるのに…まさか来ないとかあり得ないよね?”って言われたし…俺は行かなくちゃ…あいつに嫌味を言われるくらいなら倒れるまで働いた方がマシだ…!」

「か…薫…お白湯用意したから飲んで早く休んで…」

「ありがと、千鶴」


一気に飲み干してバタンと倒れるように眠った薫に心の中で謝った。


「ごめんね、薫…こうでもしないと薫はきっと休んでくれないから…」


きっと薫は無理しすぎてそのうち倒れてしまう。私はそれを心配し昼間のうちにある薬を準備していた。

私達が大切に持っている雪村家に代々伝わっていた様々な薬の製法が記された書物。その本に載っている、安全、安心な睡眠薬“ヨクネレール”を調合しておいたのだ。無味無臭でお白湯に混ぜてもきっとわからない。気づかず飲んだ薫はこれで丸一日は眠るだろう。


「薫、安心して!非番の日の薫の仕事は私が薫のフリをして片付けてくるから!」


早朝、私はいつものように男装を完璧にし、髪を高く結った。小太刀を腰に差し、意気揚々と屯所に向かって出発した。
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