秘密の二人

□本気の勝負
1ページ/2ページ

「やばい…“おはようございます!”って挨拶してきた廊下を掃除してる薫が超可愛かった…あいつ男なのに…男にときめいちまった…どうしよう俺…」
「いや、平助の気持ちも分かる。今日の薫はやたら可愛いからな…もう俺衆道って言われてもいいから薫に交際申し込もうかな…」


「朝から平助に新八さん何言ってるの…薫が可愛く見えるなんて疲れが溜まって目がおかしくなってるんじゃない?」
「そんなに言うなら総司も見てこいよ!」
「え〜!わざわざ薫を?」
「お前の部下じゃねぇか」


そんなこんなで。
どうして僕は非番の日なのにわざわざ可愛くない部下の顔を見に行かなくちゃいけないんだ…と思いながら廊下を掃除してる彼を遠目から確認してみた……


薫じゃない…あの子だ。

薫が入隊試験を受けに来た前日、僕が屯所から追い出した自称道場破りの男装した女の子だ。



…そうだ。あの子を問い質せば未だに謎の多い薫の情報を掴めるかもしれない…僕は彼女に声をかけると、薫としきりに言い張る彼女に木刀を渡し稽古として手合わせを提案した(←決して強制ではない)女の子だし打ち合うなんて怖くて、すんなり薫じゃないと認めるかと思ったら意外とそうでもなかった。


「いつでも、どっからでもかかっておいで」
「そうですか…」


僕の言葉に返事をして間を読もうとする素振りを一瞬見せた後、彼女は消えた。
僕を油断させて一気に叩くつもりなんだろう。薫と一緒で凄い跳躍、瞬発力だ。
目で追えなくても、どこから狙ってくるかは気配で分かる。


…上だ。


「バレバレだよ!」
「きゃっ…!」


上から落ちてくる彼女の打ち込みの衝撃を木刀で受け流す。薫の時とは違って彼ほど威力はない。きっと女の子だから同じ鍛え方をしていても骨格や体格の違いが差になっているのだろう…と、ぼんやり考えた。


「…次は僕の番」


体勢を必死に戻そうとしている彼女に容赦なく突きを放つ。流石と言うべきか、素早い動きで二段目までの突きを彼女はかわした。だけど僕が崩れた体勢を見逃す訳がない。


「かはっ…」

「あ…しまった…」


ついつい超本気の突きが彼女のお腹に思いっきり入ってしまい、彼女はペタリと気を失って倒れてしまった。
そのまま寺の境内に転がしておくわけにはいかないし、僕は彼女を抱き抱えると自分の部屋へ向かった。


「…総司、何をしている…?薫…?いや違うな…誰だその女は」
「さぁ?薫のフリをして屯所の雑用を色々してた子だよ。事情を訊くにも薫だって言い張るし…手合わせしたらちょっと突きが綺麗に入っちゃってさ…」
「ならば責任持って介抱してやれ。意識を取り戻したら事情を訊ねることにすれば良い。俺が副長に事情は伝えておく」
「わかった。よろしくね一くん」
「しかし、平隊士たちが今朝から“あの生意気な薫が天女に見えた。俺の目はどうなってるんだ”としきりに騒いでいたが…こういうことだったのか…」


途中で会った一くんは、即座に色々事情を理解してくれて面倒な(←僕は)土方さんへの報告と説明もしてきてくれるみたいだから、僕は自室に彼女を運ぶと布団の上に寝かせた。
介抱してやれ…って言ってたけど何をしてあげれば良いのかな…?


「とりあえず…打った所を見ないとね」


お腹を見るために着物を緩めると、晒をきつく巻いた胸元が目に入りちょっとドキリとした自分に驚いた。
こんな子どもに…有り得ない。マジで有り得ない。(←大事なことなので二度…)

ちょっと…思ったより体の線が細くて…でも女の子らしい曲線で…それに僕は驚いただけだ。きっとそうだ。そうに決まってる。


「ん?」

「ふぁ…あ…あれ?どこ此処…」


上半身が晒だけになり寒くなったのか彼女は目を覚ました。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ