秘密の二人

□二人の処分
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簡単に新選組に近付いた理由は分からないだろうと思っていたけれど、やはり薫たちは新選組に近付いた本当の目的を今、明かすつもりはなさそうだ。こちらとしても問い詰めるだけの手札を持っていない。

そもそも今日彼らが入れ替わっていたのは千鶴ちゃんが疲労困憊な薫を心配して独断で行ったことらしい。

その理由を聞いて土方さんや一くんは、確かにあんなに毎日総司に目をつけられてしごかれていたし…と彼らに同情的だ。


「家族を心配するのは結構だが、ここは泣く子も黙る新選組だ。これからは勝手に入れ替わったりするなよ」


「…はい。薫は私に騙されて睡眠薬で眠らされていたので…どうか薫のことは怒らないであげてください…」

「千鶴…お前は黙ってろよ」

「だ…だって…薫…」


何だか仲睦まじい双子に部屋の空気は無罪放免に向かっている。土方さんも一くんも甘過ぎるんじゃない?
確かに手札は少ないけど、奴等の尻尾を掴むせっかくの好機…何かないか…と僕は頭を素早く回転させた。


「あ!そういえばさっき君達の家に行ったけど病気の家族なんて居なかったよね…?」


僕の一言に、じゃあもう今日は帰れよ…と言いかけていた土方さんが固まった。
薫も痛いところをつかれたみたいで言葉の端々に焦りが見える。


「そ…それは…!可愛い妹を一人残して家を離れるわけには…いかないから…!」





「じゃあ離れなければ良いんだな?」


土方さんの言葉に二人はキョトンとした顔をした。


「薫の特別に認めていた通いでの勤務は今日を以て取り消す。お前は他の隊士たちと同様、大部屋で生活をしろ。あと…妹のお前は…流石に男装してても女だから他の隊士と一緒にって訳にもいかねぇ。だが生憎空き部屋もない…だから総司の小姓って形で総司の部屋で寝泊まりしろ」

「えっ…」


瞬時に色々取り決めをした土方さんが最後にとんでもないことを言い出しやがった。
僕は双子には見えない、聞こえない角度で土方さんに抗議した。


「ちょ…!ちょっと困りますよ土方さん!僕があんな正体不明の子供と同室なんて…」
「…アイツらの正体も目的も謎のままだ。幹部の中でアイツらと戦闘になればまともにやりあえて、アイツが女でも最後まで手を出すことがなさそうな奴はお前以外いないだろ」
「そんな…!土方さんとか一くんは…」
「仕事上不在がちだから監視できないし無理だろう」
「あの三人のうちの誰かは…」
「新八や平助はうっかりしてるから無理だ。原田は十中八九手を出すだろうし…」


「……わかりましたよ…僕が一日中あの子の監視しとけば良いんでしょ?」





おもちゃにして遊んだら楽しそうな子だと最初に見たときは思ったけど…

今は最初とは少し印象は違う。

たぶん彼女はあれが何だったのか理解していないのだろうけど、僕の脳裏には白く艶のある肢体をくねらせながら僕の指で喘いでいた艶かしい姿が焼き付いているというのに。













…僕があんな子供に反応するわけがないじゃない。
せっかく広い一人部屋を使っていたのに…目障りな存在が来てかなり迷惑だ。
目障り。迷惑。目障り。迷惑。


あんな子に僕は特別な興味なんてない。


興味なんて…ないんだ。

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