秘密の二人

□秘密の二人
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「荷物まとめた?」

「あ、はい。元々そんなに何も持っていなかったので」


予定より早く新選組に復帰することが決まり千鶴ちゃんと約一月住んでいた小さな家を小さな荷物を持って二人であとにする。


「男所帯の屯所では君は一応男の格好を今までみたいにしなきゃいけないけど…そのうち許可を貰って祝言あげて…家を借りて一緒に二人で住もうね」

「…嬉しいです!私、沖田さんと一緒なら何処でも幸せです」


あれから正しい知識を叩き込んだお陰なのかはわからないけど、女らしさに目覚めた千鶴ちゃんは惚れた贔屓目を差し引いてみても文句なしに可愛い。
屯所へ向かって歩きながら、どうやって他の男の魔の手から彼女を守ろうか頭のなかは忙しく考えている。

小さな家で過ごした二人だけの濃密な時間。そんな時間が仕方がないことだけど、これから少なくなってしまう。そのことがお互いわかっているからか、屯所に近くなるまでは、と重ねた手をしっかり離さないように握った。

ふと、千鶴ちゃんは繋いだ僕の手を更に力をこめて握りながら、隣を歩く僕を上目遣いで見上げて話し掛けてきた。


「あ、あの…私が沖田さんに…あんな大胆なこと…いくら知らなかったとはいえ…あ…あんな破廉恥なこと…やっちゃったことはくれぐれも皆さんに秘密にしておいてください!薫が知ったら卒倒するかもしれないし…」


真っ昼間から上目遣いで(←無自覚)なんて内容の話を掘り返してきてるんだ、と内心思った。可愛くて色々ムラムラと疼いてくる気持ちを今すぐぶつけてやりたいけれど、残念ながら今はもうあの家を出て人の往来が多い道を歩いているのだ。この場で押し倒すわけにもいかない。



「…そんなこと言うわけないでしょ。色んな千鶴を見て、知って、感じて良いのは僕だけなんだから」












暫くの間、二人の関係は皆には秘密にしておき、時期を見て話そうと言った僕の言葉に千鶴ちゃんは素直に頷いた。
まあ、言わなくても僕らの関係が変わったことなんて皆ならすぐに気付くだろう。…で、一人気付かず一生懸命隠そうと頑張る千鶴ちゃんで遊ぶの楽しそうだよね。


“ま…待ってください沖田さん!!ここは廊下…皆さんに聞かれちゃう…”
“なら、頑張って声を出さないようにしないとね?”
“沖田さんの意地悪…!!でも…好き…ぃ!”
“…千鶴!”


今、押し倒せない分の欲求不満も頭の中での妄想で補ってみると、意外と楽しかった。よし、この設定での意地悪をいつか実践してやろう。
現金なもので、さっきまでは少し憂鬱だった屯所での生活がかなり楽しみでワクワクしている。


「…あぁ楽しみだな」

「そんなにお仕事楽しみなんですか?ずっと休んでましたもんね」


思わず零れた一人言に千鶴ちゃんは嬉しそうに返事をした。相変わらず千鶴ちゃんは検討違いだけどまぁいいや。












*****


「総司!どっか近くに家を借りて二人でさっさと早く住みやがれ!」

「えっ?良いんですか土方さん。嬉しいなー!どうしてわかったんですかー?僕と千鶴ちゃんが将来を誓った恋仲なこと…」


(あんなに屯所で堂々とイチャイチャするのを見せられるこっちの身になりやがれ!)


「あれぇ?土方さん、筆が握りすぎて折れてますよ〜(ニヤニヤ)」


…屯所に戻り数日で僕は幹部隊士として最初に所帯を持ち別宅に暮らす許可を貰えたのだった。
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