秘密の二人

□秘密の二人
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「千鶴がまさか沖田と祝言をあげて夫婦になるなんてな…」

「屯所の近くにあるお家だし…いつでも来てね薫」


僕が屯所の自室に戻ってくると部屋の中から千鶴ちゃんと薫の話し声が聞こえてきた。
この会話は直ぐに邪魔しなくてはいけない。新婚夫婦のイチャイチャしたい愛の巣に薫が入り浸ることになるとかなり厄介だ。


「いや、薫は絶対来なくていいからね」


「総司さん!」「沖田ぁ!!」


素早く襖を開け、屯所から新居へ引っ越すために部屋を片付けていた千鶴ちゃんと薫の会話を即邪魔してやった。
双子だからか同じ瞬間に僕のことを見て僕の名を呼ぶけれど、僕を見る眼差しも呼び方も二人は全く異なっていた。


「コレを機に早く妹離れしてね?お・義・兄さん?」


「お…おのれ…沖田ぁ…!」


メラメラと燃えるような怒りを迸らせる薫に千鶴ちゃんは、あっ!と何か思い出したように手を叩いた。


「どうした千鶴?」

「ねぇ薫!私、薫にずっと伝えようと思ってたことがあって…」



ちょっと改まって話はじめた千鶴ちゃん。その様子に僕も薫も、ピンと来るものがあった。
これはもしかして嫁に行く前に娘が親に“今まで育ててくれて…”と涙ながらに挨拶するという感動のあの儀式だろうか、と考えた。
双子の兄妹だとはいえ幼い頃に親を亡くし二人で寄り添って生きてきたんだ。だいたい双子の癖に千鶴ちゃんの保護者みたいな立ち位置だったしね薫って…
少しくらい二人きりの家族で話をさせてあげよう。




「…僕は少し席を外しておくね」

「沖田…」


空気を読んで席を外そうとした僕を薫は感謝の眼差しで見上げた。
僕と薫の間がいい空気になった、そんなときだった。



彼女が爆弾を落としたのは…





「あのね、薫が前に教えてくれた赤ちゃんの授かり方…あれって違うのよ!沖田さん、薫には口頭で良いので正しい知識を教えてあげて下さい!もし薫がお嫁さんを将来貰って…赤ちゃんを連れた鳥さんをずっと待ってたら大変なので…」


「「へっ…?!」」


双子じゃないのに僕と薫の声は綺麗に重なった。


「ど…どういうことか…説明して貰おうか…沖田ぁ…!“薫には口頭で”ってどういうことだ…まさか“千鶴には口頭以外で”何か教えたのか…?!ままま…まさか…実地で…」

「だってさ…あんまりに何も知らないから…ナニを……千鶴、こっちにおいで!」

「…?…なんですか?」

「いい?走るよ…!」



千鶴ちゃんの手を引いて僕たちは新しい二人の家まで全力で走り出した。


「行くな〜千鶴〜!」
「待て沖田ぁ〜!」



後ろで叫んでいる薫の声がいつまでも止まない。
秘密じゃなくていい僕たち二人の関係は誰にも壊せないくらい頑丈なんだ。

誰か壊せるものなら壊してみなよ。

幸せで楽しくて。僕たちはずっと笑っていた。




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