流れ行く時
□珍しい客
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あれから8年の月日が流れた。
私は今年16になる。
これでもそれなりの遊女。
「菫。」
『はい。 女将さん、何か?』
「今日は大事な客がくる。 相手しな」
『?』
女将の言っていることが理解できなかった。
遊廓は指名制だ。
男が気に入った遊女を指名するのだ。
女将に頼まれるなど可笑しい。
気持ちが伝わったのか。
「珍しい方々でね。 指名はされない。」
『そうなのですか?』
「それどころか女も来る。」
それでは本末転倒だ。
どんな人たちだろう。
純粋に興味があった。
「うまく気に入られれば」
『え?』
「もっと楽になるよ。」
驚いた。
女将が珍しいことを言う。
気づいたときには女将はいなかった。