あなたがいるから…

□新緑
2ページ/9ページ

「みなさん。さっき軍から通達があり、この近辺に指名手配中の殺人犯が迷い込んだそうです。」
教室内がざわめく。

ここはとある町のハイスクール。3時間目が終わった時、担任が教室に青い顔で入ってきたのだ。
(担当授業でもないのに、おかしいと思った。)
用意した授業道具をまとめ、一息ついてリザは担任を見る。
「寄り道せずにまっすぐ帰宅するように!出来るだけひとりでは帰らないでくださいね。」
と、先生が言う。その後すぐに解散となり、生徒達は足速に下校して行った。リザもいったんは帰路についたが、引き返し生徒会室によった。
どうせ家から出られないのならその時間を使って仕事を済ませてしまおうと思ったのだ。
「え−と…、あった!」
文化祭予算と書かれたノ−トを鞄につめるとリザは、学校をあとにした。

いつもの帰り道、寄り道をした所為か、青と黒の軍服姿のひと以外はひとりも見掛けなかった。たまに目が合うと、みな、いぶかしげに顔をしかめた。一般市民であるリザが邪魔なのであろう。
リザは空をみあげる。真っ青な空に芽吹いたばかりの木々の緑。
(こんなにいい日和なのに、もったいないな…)
そんなことを考えながら、公園の並木道にさしかかった時である。
「……………?」

上の方で木が動いたようにみえた。
一瞬リザの身体が固まる。
(だめ、落ち着いて。リスかもしれないし…)
自分に言い聞かせ、何事もなかったかのように歩き出す。
…が、すぐに足をとめた。目の前に葉がパラパラと降ってきたからだ。
上を向こうとしたその瞬間・・・・・

「うわあああああああっ――!!」
「…!!」

リザの目の前に葉っぱと一緒に人が降ってきたのだ。
とっさに身構えるリザ。一応、少しの護身術は心得ているつもりだ。…無駄な抵抗になるかもしれないけど…。

「いたたた……」

腰を打ったのか、そこを擦りながら起き上がる人物を観察する。
身長はどのくらい?格闘技には長けていそう?武器は…?銃はもっていないか……?

リザは目を見開いた。想像していたものとははるかに違うものが目に飛び込んできたからだ。



−−−−−−青−−−−−−



マリンブルーのそれは陽の光に映えて、とてもキレイだった。
リザは思わず目をこする。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ