あなたと同じ夢をみたい…

□88・呼び名
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「リザ」

「はい」
「……・。」
しばしの沈黙が流れる。
ここは軍の東方司令部ロイ・マスタング大佐の執務室。彼はたくさんの書類にうずもれるように机にすわっている。締切間近の残業中らしい。
「まったく君は…」
ロイが眉間にシワをよせ呟く
「なにか?」
手伝いで一緒に残っているリザ・ホークアイ中尉が書類に目を落としたまま答える。
「親しいとはいえ、男が、君の、ファーストネームを、呼び捨てたのだよ?」
指をリザの眉間につきさしひとつひとつ確認するかのように強く言葉を投げ、リザにつめよるロイ。
あっけにとられるリザ。
「はぁ…。」
「顔色ひとつ変えないとは…。…不快感を感じるとかないのかな?」
少し怒った顔も見たかったのに…。ロイは思った。
「それは……。…っ。」
なにか言いかけてリザは言葉を飲み込んだ。そして一息つき
「大佐こそ…、いきなりどうなされたんですか?」
と、逆に聞き返す。赤みがかったトパーズ色の瞳にまじまじと見つめられ、ロイが焦る。
「あ…、いや…その…。ほっほら、私たちもずいぶんと長い付き合いになるではないか!親睦を深める意味でもな、君の事をファーストネームで呼んでみようかと…」
「別にかまいませんが。」
そっけなく仕事にもどるリザ。
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