oz始めました
□No.1
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それは大きなひまわりが咲き乱れる初夏の事。
この日、俺は実の親に捨てられた。
……いや、養子に出された。
そう言った方が正しい。
だからといって恨んでる訳でもない。
俺の生まれた家はとても貧しかった。
それでも両親は精一杯の愛を注いでくれた。
でも、俺に不自由を感じさせたくない。
そう思った両親は俺を養子に出したのだ。
だから恨んでなんかいない。
むしろ感謝している。
強いて言うなら、少し……。
ほんの少し、寂しいだけだ。
「それではこの子は大切にお預かりしますので、ご安心下さいませ」
「よろしく、お願いします……っ」
目を赤くしたお母さんが震えながら頭を下げると、栄さんは優しく笑って頷いた。
さよなら、なんて言わない。
言う必要ない。
離れ離れでも、俺は母さんと父さんの子どもだから。
だからこそ、笑顔で別れよう。
「いってきますっ!」
また会える事を願った少女は、ひまわりにも、太陽にも負けない笑顔を浮かべた。
陽の光を反射させる目元の雫に、大人達は気付かぬフリをする事しか出来なかった。