oz始めました
□No.4
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子ども達に手を引かれて居間に来た俺は理一さんの後ろに隠れていた。
なんで隠れる必要があるかって?
そりゃ――。
「覚えた?」
「え、あ、いや、その……」
夏姉による一族紹介により改めて人の多さを認識したらしい、表情を引きつらせる健二を影から見やる。
やっぱ覚えられませんよねー、こんなに。
よっぽど記憶力よくないと無理だわ。
「ジュース飲むかい?」
「あ、ありがとー」
俺の考えを読んだらしい理一兄が俺を隠しながらジュースのペットボトルを向けてくれた。
ありがたく入れてもらったジュースに視線を落としグラスに口をつける。
オレンジ色のそれはほどよく甘酸っぱくて目を細める。
「あ、あのー……納戸の方に男の子と女の子が……」
「あぁ、佳主馬と紅蓮ちゃんね。あの子、こういうの苦手で来たがらないのよね……。それに紅蓮ちゃんが付き合ってくれてるんだけど」
おずおずと手を上げた健二の質問に聖美さんが困ったように頬へ手を添えた。
いやー、俺はここにいるんスよね、それが。
口元に出された唐揚げに反射的に口を開けて食べると何故か理一兄に笑われた。
何故だ。
ふと携帯電話がメール着信を知らせる。
開いてみると佳主馬からで、要約すれば早く戻って来い、との事。
ツンデレな書き方のそれは可愛らしすぎて思わず悶えそうになる。
仕方ない、可愛い子に頼まれちゃ嫌とは言えない。
グラスを置いて人の影に隠れながらゆっくりと健二と夏姉に近付く。
「そ、その、紅蓮、ちゃんの事なんですけ――」
「なーに、俺がどーかした?」
「っうわあ!?」
ちびりちびりと飲んでいたジュースのグラスを握りしめている健二の後ろから肩に顎を乗せる。
と、肩を跳ねさせた健二が両手を上げた拍子に落ちかけたそれを慌てて伸ばした手で掴む。
「ったく、何やってんお前は」
「ご、ごめん」
ため息混じりにグラスをしっかりと持たせると片手で軽く頭を撫でた。
健二が口を開くより先に離れて夏姉の方に目を向けた瞬間、俺は固まってしまった。
きらきらと輝かしい目の夏姉に勢いよく抱きつかれたからだ。