oz始めました
□No.5
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夏姉や子ども組と久々に風呂に入ったがために少々はしゃぎ過ぎてしまった俺は、若干のぼせてしまい一足先に風呂から出た。
この年になってはしゃいで若干のぼせるとか黒歴史だわ……。
あまりに情けない失態に思わずため息をついていると、不意に人の気配を感じて顔を上げれば、そこに健二がいた。
「よっ」
「よっ、じゃないよっ」
濡れた髪の毛をタオルで拭いながら笑いかけると、健二は珍しく目をつり上げ睨んできた。
あら、反抗期かしら。
「どれだけ心配したと思ってるの? もう会えないかと思ったんだから……っ」
目を丸くする俺をよそに情けなく眉を下げた健二は本当に悲しそうな顔をしていて、思わずいつもの笑みを消す。
……まぁそうだよな。
健二の性格なら、心配して一生懸命探してくれるよな。
そう思うと申し訳ない反面で、やっぱり健二は健二だ、なんて思いから目を細める。
「……でもさ健兄、ちゃんと会えただろ? 大丈夫、これは必然だ。この世に偶然はないからな」
「っはは……ほんと、紅蓮には敵わないや」
昔の呼び方を口にしながら強気で悪戯っぽい笑みを浮かべれば、目元を手で擦った健二は仕方なさげに笑った。
いいんだよ、別に。
お前には言ってないけど、俺だって健二に敵わないところはあるんだ。
少しくらい逆の立場にならないと俺の気が済まん。
穏やかな空気に表情をゆるめていると、健二は何かを思い出したかのように俺の手を引いて中庭に出た。
「どうせ紅蓮にはお見通しだろうし、なら聞かれても気にしないから。ていうか、手伝ってくれるよね?」
「……え゛?」
はっはっは、紅蓮さんにはなんの事かわからないなー。
にっこりと笑った健二に嫌な予感がして冷や汗を流すと、それに気付いているのかいないのかいまいちわからない健二は電話を始めた。
……あれ、これってある意味ピンチ?
思わず頭を抱えてため息をつくと、ハヤテが心配そうに「くうん……」と鳴きながら駆け寄ってきた。
もうハヤテマジ天使。
ハヤテと戯れる事で心を癒していたのに突然何かに気付いた駆けて行った事に少し不満を抱く。
「もう、他人事だと思って……」
「どーしたの?」
「あ、うん。実は――」
「こらハヤテ!!」
苦笑混じりに答えようとした健二は言葉は、突然響いてきた万助おじさんの怒鳴り声にさえぎられた。
ふと、普段は大人しいハヤテが警戒するように吠えている事に気付く。
……可笑しいな。
ハヤテは賢い子で、そうそう吠えたりしないのに。