oz始めました
□No.6
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翌日の朝。
ルームウェアから動きやすい服に着替えて携帯を片手に納戸へ向かう道すがら新着メールを開くと、件名に“Solve Me(私を解いて)”と書かれたメールが届いていた。
本文には一見は数字がランダムに羅列されているだけだが、それなりに知識を持っている……っていうか侘兄に専門知識を叩き込まれた俺には、それが数式だとすぐにわかった。
「……って、だからって解くなよ俺!」
これ返信したらアカウント乗っ取られるぞ!
いやでも、まだ解いただけだし……返信してねーからセーフだセーフ。
無意識に解いていた己にツッコミを入れ、冷や汗を流しながら胸元で拳を握ると不意に納戸が開いた。
突然すぎるそれに驚いて肩を跳ねさせた俺の視界に入ったのは怪訝そうに眉をひそめる佳主馬だった。
「……さっきから何やってんの」
「あ、いや、別に」
慌てて首を振ると呆れたようにため息をつかれ、思わず口元が引きつる。
あのー……俺、一応年上なんですけど……?
悶々とする俺に背を向けた佳主馬は向かって左に身を寄せて作った隙間を軽く叩いた。
これはあれか、ここに来いという事か。
元より無理矢理にも入るつもりだったため遠慮なく中に入って腰を下ろす。
なんだろ、このしっくり感は。
……狭いからか?
「で、何騒いでたの?」
「んー」
生返事を返しながら携帯電話をいじり、眉をひそめる佳主馬にさっきのメールを見せる。
一見意味を成さないような数字の羅列は、見る者が見なければ暗号だとわかる。
佳主馬にも来ていたのだろう、それを見て一瞬納得したように頷いた彼はすぐ不機嫌そうに眉間にしわがよった。
「なんで開けたの。今もしウイルスでも入ってたらどうするつもり?」
「そっくりそのままバットで打ち返してやろうか?」
視線で咎めてくる佳主馬だが文字の羅列、しかも真ん中辺りから見せたにも関わらず納得したという事は、つまりそういう事だ。
真顔で切り返した事が気に入らないのか、口をつぐんで不服そうに睨んできた佳主馬から逃れるように携帯電話へと視線を落とした。