oz始めました
□No.7
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放心したように無言で座る佳主馬を見ていられなくて、携帯電話を閉じて優しく頭を撫でる。
ああ言ったけど、本当は俺が倒したかったしあのままなら倒せたかもしれない。
でも、原作を崩す事で起こるデメリットが大きいから。
だから俺にはあれ以上手出し出来ない。
それにアイツにも言ったように、あれは元々佳主馬の獲物だ。
「何、この酷い書き込みは……」
愕然とした声に顔を上げると、健二越しに画面いっぱいのアンチコメントが見えた。
それらの宛先はもちろん、俺達……キングカズマとハオウグレン。
頭に来るか否かだけで答えるなら来る。
しかしそれらは全て予想の範疇(はんちゅう)であり想定内の事だった。
「気にする事ないよ! ゲームなんだし」
「ゲームじゃないスポーツ。戦いだ」
ゲームだから、なんて言うのは所詮甘えでしかない。
例えば歌手が音を外し過ぎたり、女優の演技が下手だったらアンチがくる。
歌手は歌のプロだから音を外さないのが当たり前、女優は演技のプロだから演技が上手いのが当たり前。
それと同じ事だ。
微かに目を張って心許なく視線をさ迷わせる健二に眉を下げて曖昧に笑う。
「ありがとな。正直、俺もちょっと度が過ぎてるとは思うよ」
確かに俺達はプロだ。
だが、楽しくて戦ってたらいつの間にかスポンサーが付いて、いつの間にかキングだのハオウだの呼ばれていただけの、普通の学生なんだ。
純粋にバトルを楽しんでたのはいつまでだろうか。
だから俺は誘われた時しかバトルをしなくなった。
佳主馬もそれを知ってるから極力誘って来なかった。
「――逮捕だーっ!」
居心地の悪い静寂を破ったのは複数の足音と翔兄の先導で納戸に突入して来た親戚一同だった。
2人の間にいた俺は健二が手を伸ばすよりに後ろから抱き寄せられ、皆に押し倒される事はなかった。
何を言いたいのか、混乱している彼らの言葉はさっぱりわからない。
とりあえず、納戸にはそんな大人数入れないと思う。
そう言いたくなった俺は悪くないはずだ。