oz始めました

□No.9
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両手に持つおむすびを口に運んで咀嚼しながら複雑そうな健二の表情を脳裏に浮かべる。

昨晩の暗号を解いたのは全世界で55人いたが、その中に健二は含まれていなかった。

最後の1文字だけ違っていたらしい。

身の潔白を証明出来て嬉しいような、答えを間違えてショックなような……。

いろいろと思うところはあるようだが今は落ち着いているのが見てとれる。

夏姉のおかげ、なんだろうなぁ。

なんだかんだお似合いなんだよな、あの2人。

今回の騒動は栄ばあちゃんが関係各所に指示を出してくれたからこそ落ち着いたようなもんだ。

「さすが俺らのばあちゃん。日本一だよな!」

「バカだね」

気恥ずかしいのか憎まれ口叩く栄ばあちゃんに口元をゆるめながらウェットティッシュで指先を拭う。

嬉しい癖に素直じゃないところとか、ほんと侘兄に似てる。

やっぱり親子だな。

そう思いながら隣に座る佳主馬からノートパソコンを奪い取った。

「ちょっ、何するのさ」

「何するも何も、食べる時にパソコンをいじるのはマナー違反だろうが」

パソコンを反対側に置いて眉をひそめている佳主馬の額を弾く。

不服そうに睨まれたからそっぽ向いて枝豆を食べていると隣からため息が聞こえてきた。

「紅蓮って時々母さんみたいな事言うよね……」

予想外の一言に二度ほど目を瞬いて首を横へ傾ける。

俺が、佳主馬の母さん……?

「こんな生意気な子どもいら……あだっ!」

先に言ったのは佳主馬なのに、数秒の無言後に真顔を作ると勢いよく頭を叩かれた。

珍しく手加減なしに叩かれたところを指先で撫でながら眉をひそめる。

「なんで機嫌悪いんだよ」

「……別に」

一瞬だけ、微かに顔を歪めた佳主馬は身体を後ろにずらして腕を伸ばし、手にしたパソコンを自分の背後に置いた。

乱暴に皿の上に乗る昼飯をかき込む佳主馬を探るように細めた目は、相手が動きを止めた事により大きく見開かれる。

「ごほっ……!」

あーあ、一気に掻き込むから……。

気管に入ったのか、佳主馬は目に涙を滲ませ慌てて皿と箸を机に戻した手で口元を覆った。 

激しく咳き込む佳主馬に呆れを含んだため息をこぼし、お茶が入ったグラスを相手の前に置いて優しく背中を叩く。

お茶を流し込んで落ち着いてきたらしい佳主馬に潤んだ目で睨まれた。

ので、とりあえず頭を撫でてみる。

「どーどー」

「……紅蓮のせいだ」

「人はそれを横暴と言う」

涙で潤ませながら上目気味に睨む姿には迫力のはの字もない。
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