テニス始めました
□No.1
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どうも。
時の流れは早いもので、気がつけば俺、刻和紅蓮は5歳になっていました。
いやー、今までスゲー暇だったっつーか羞恥心がヤバかったわ。
中身は中学生な訳だし?
おむつ替えとかただの羞恥プレイでしかないのは皆わかってくれるだろう。
さて、とりあえず新しい家族について説明しておこうか。
やわらかい金色の瞳が印象的な母、刻和由紀と限りなく赤に近い赤茶毛をした父、刻和仁の元へ俺は生まれ落ちた。
まさに美男美女でたまにケンカもしてるけどすぐに仲直りするいい夫婦だ。
ちなみにケンカの勝者は常に母である。
母強し。
え、使い方違う?
気にしない気にしない。
そんな両親からそそがれる愛情に初めはかなり戸惑い、5年経った今でも慣れる事はない。
親バカな両親に呆れているし凄くくすぐったい。
でも、それが嬉しく思う自分もいる。
……っ、今のなし!
ぶんぶんと頭を振って花壇の水やりに没頭する。
俺がいるここはいわゆる幼稚園。
といっても前世の年齢プラス現在の年齢イコール成人間近な俺が幼稚園児に合わせるのは少々骨の折れる話だ。
だって皆若いんだもん、いくら体力に自信あっても子どもには勝てる気がしない。
「 いつでもI love you. 君にTake kiss me.
忘れられないから 僕の大事なメモリー 」
「――ねぇ」
「っ!?」
リフレッシュという事で鼻唄混じりに水を与えていると不意に背後から声をかけられ、目を見開きながら勢いよく振り返る。
……女の子……いや、男の子か。
勢いよく振り返った事に驚いたのかきょとんとする茶髪の男の子に内心で息をつきながら警戒を解く。
「なにかよう?」
じょうろを抱えたまま首を傾げると男の子はやわらかい微笑を浮かべて頷いた。
「きみ、いつもここでうたいながらはなにみずあげてるよね? すきなの?」
えーと、その「すきなの?」は歌に対して?
それとも花に対して?
主語がなかったためいまいちわからないがとりあえず頷くと、その子はどこか嬉しそうに顔をほころばせて手を差し出した。
「ぼくもおはな、すきなんだ。よろしくね」
あ、そっちか。
その握手に応じながらその笑顔に少しだけ見入る。
うむ、この子は将来有望だな。
中学入る前くらいから絶対モテ始めるぞ。
「よろしくな。ところできみのなまえは? おれ、ときわぐれん」
「ぼくはふじしゅうすけ」
「ふじ、ね。よろ……んん!?」
ふじしゅうすけって……あの不二周助!?
聞いた名前を脳内で漢字にした俺はその場で固まって立ち尽くしてしまった。
いやだって、テニスの王子様にでるサボテン好きな微笑み王子しか思い浮かばない……。
「あの、ときわさん?」
少し困惑したような不思議そうな不二周助の声で我に返ると慌てて手を離す。
ヤッベ、脳内トリップしてた。