書物その3

□終わりと始まり
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とある人物により、平穏だった世界は「異世界」へと変わってしまった…。



兵を挙げる軍も現れ…幾多の人々は戦乱の世に散っていった……。

そんな世界に、一人の少女が

この戦乱の世に巻き込まれていった。


そしてそれは


一つの言葉を発した瞬間に



運命の歯車は動き出し





宿命は…交差する……




「はぁ……っ、はぁっ…!」

一人の少女が肩で大きく息をしている。
数メートル離れたところには、その少女を怯えと驚きの混ざった表情で見ている男達がいた。
今まで男達がいた少女の足元には、つい一瞬前に少女によって生を止めた男がいる。
その少女の手には、敵の返り血を散々に浴び、紅に染まった銀の刃の柄を握りしめている。
少女は荒い息をしながら、自分が今から殺める男達を、殺気の籠もった瞳で睨み付けた。
氷よりも冷たい瞳に射抜かれ、男達は硬直してしまった。
刹那、少女の体が男の中の一人へと向かって行った。
そして、一瞬とも隙を見せずにその男の急所を紅に染められた短剣で突き刺した。


男1「ぐあぁっ!」

急所を深々と刺した後、その近くにいた男2人を胸元に隠してある細く小さな剣を取り出し、喉元に投げつけた。
それと同時に数歩走り短剣で男を突き刺し男の力が緩んだ直後、鳩尾に強烈な蹴りを入れた。
その間の出来事は、僅か4秒とも必要なかった。


男2「この…っ!」

男が少女に向かって剣を振り上げ、そして下ろした。
少女はそれを顔の近くで、両手首で守った。
少女の目の前にいる男はしめた、と思いっきり口元を歪ませた。
しかしそれも一瞬で終わった。
手首を切った筈の刃は、少女の服の袖を裂いただけだった。
刃が当たった箇所には、一本の小さな剣が入っていた。

男2「な…っ!」

男が驚いている隙を見て、右足で男を回し蹴りを喰らわせた。
痛みで怯んだ瞬間を少女は見逃さなかった。
そのまま男の背後へと回り込み、短剣で首の後ろを真一文字に、躊躇することなく斬った。
そして、男は倒れた。


「あと…5人……。」
そう呟きながら残りの男達へと向かって行った。

男3「ひっ…。」
1人の男が短い悲鳴を上げ、その場から逃げようと走り出した。

「…………逃がさない。」

少女は手首の所に隠してあった小さな剣を取り出し、男の背中へと真っ直ぐに投げた。
短剣は急所に突き刺さり、男は意識を失った。
少女は相変わらず無表情のまま、男達へと向かっていく。

男4「く…っ!」

少女は1人の男の懐へと潜り込んだ。
男はそれに反応したが、遅かった。
少女は男の左胸に短剣を突き立て、そして抜いた。

「あと……2人……!」
残った男達に向かって、今度はゆっくりと、まるで炎(ほむら)のように歩いて行った。

男5「う……うあああぁぁぁっっ!!」
男が少女に向かって斬りかかる。
少女はそれをまるで目の前から枕が飛んできたのをよけるようにかわし、身をかがめて短剣ではらった。

「……………あと………1人…………。」

少女はユラリと体勢を戻し、最後に残った1人へと足を進めた。

男6「た、助け……っ!」

しかし彼女は最後の言葉を言わせなかった。
短剣で腕を突き刺し、男の喉笛を迷うことなく、切った。


「はぁ………はぁ……………っ!」

全ての敵を倒した少女は、荒く乱れた息をしながら自分が倒した全ての兵を睨むような目つきで見ていた。

「…これで……っ、はぁ…、全員……かな………っ。
はぁ……っ、はや、く……皆の所に…帰らない、と………はぁっ……。」

何も考えられない程に疲れ果てた少女…。

しかしそれが僅かな隙を作ってしまった。


男がうつ伏せの体勢から、微かに頭をもたげて、腕で上半身を支えながら少女の方を見た。
しかし少女は気付かない。
そしてその男は慎重に片腕を伸ばし、仲間の体に刺さっている小さな剣を引き抜くいた。
そして最後の力を振り絞り、それを少女の背中の急所へと素早く投げた。

「が…っ!」

少女は短い悲鳴をあげると、膝から崩れ落ちて倒れた。
投げた男は少女が倒れたことを確認し、微かに、不敵に口元を歪ませるとそのまま息絶えた。
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