恋模様

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「だって、この前朝比奈先輩が体調崩した日とか抱きかかえてたし、毎日一緒に帰ってるし」

「………」


……ん、んー…
そんな目で見られていたのかそうか。
いやとんでもない誤解が生まれていたものだ。
あんまりの不意打ちで上手く言葉が出ない私を、赤司君が見下ろしてくる。


「…だそうだけど葵、どうする?」

「…え?どうって?」

「付き合ってることにする?僕は構わないけど」

「はい!?」


この表情一つくずさない赤司君を、思いっきり凝視する。
またまた何を言い出すのこの人。
前にも似たようなことがあったよね。
けど覚えてるよ

『僕の隣に立つには、葵はまだまだだ』

そう言われたこと。

そう、これは試されている。
私が図に乗っていないか、きっと試されているんだ。
とゆーことで、


「赤司君、私は赤司君の隣に立つレベルに達していないから、それは無理だよ」


これでよし。
多分。

結局のところどうなのかと確認をとる後輩に、私は「付き合ってないよ」と結論付けた。


「そうなんですか…。あ、勘違いしていたみたいですみません」

「いいよいいよ謝らなくて。確かに一緒に帰ってるし、仲は良いのは否定しないし。ね?赤司君」

「……。あぁ」


意外な顔をしつつすみませんと謝る後輩に、そう見えても仕方なかったのかなって思って、赤司君に同意を求めた。
そしたら、同意を求めて合わせた視線を、ふと、逸らされた気がした。…のは気のせい?

と、ここで後輩は、戻ってきたコーチに招集をかけられて走っていった。
赤司君と私は速やかに体育館から出た。


「ありがとね赤司君、後輩見てくれて」

「少しアドバイスをしただけだよ」

「うん」

「葵のコーチなんて見ていられないしね」

「あ…はは…」


赤司君に痛いところをつかれて、苦笑いしか出てこない。
確かに私は説明が苦手だ。と言うか、下手だとよく言われる。
運動を教えるのは向いてないんだなーと自覚していると、


「喉が渇いた」


突如赤司様の命が発令。


「…あ、えーと、スポーツドリンクでいい?」

「いいよ。30秒」

「は!?無理無理!」


慌てて頭を振っても、赤司君は既に1からカウントを始める。

ちょ、どう考えても無理でしょ、第一ここからドリンクがある所までがどうやっても30秒以上かかる。
往復で1分半は確実だよ!
と物理的な説明はもはや通じないので、私はとにかく全力で駆け出した。

ダッシュで戻ってくるも、当然30秒以内にできるわけなく。
約2分ほどかかって、赤司君に飲み物を渡す。


「遅い。罰として、鼻から飲め」

「やだよ!てか無理です」

「芸がないな」

「はぁ!?」


赤司君はドリンクを奪うように私の手からもぎ取って、離れて行った。

なんっか今日の赤司君酷い!
機嫌でも悪かったのかな。
まぁ気にするほどのことでもないけど。

でもムカついたから、背中に向かってベーッと舌を出すくらいしてやろう。
と思ったけど、そのタイミングで振り向きそうな気がするからやめました。


 
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