恋模様

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「朝比奈、今日放課後ちょっと残って手伝ってくれるか」


授業が終わって担任の先生に呼ばれたと思ったら、雑用を頼まれた。


「先生、私部活があります」

「誰だってある。朝比奈日直だろう、よろしくな」


これだから日直は…。
面倒なことになったけど仕方ない。
取りあえず、今日遅れそうだって赤司君に報告しておこう。

赤司君が隣りのクラスでよかった。いちいち遠くの教室まで行かなくて済む。
入り口にたむろしてた男子にお願いして、赤司君を呼んでもらった。


「――と言うわけで、今日遅れます」

「あぁ、分かった。監督にも伝えておこう」

「ありがとう」

「…それよりも、このくらいの事携帯で連絡くれれ…あ、そうか」

「持ってないから、携帯」


うちは小さいころに親が離婚して、母子家庭。
私を育てるために働き詰めの母。
ちょっとでも家計の負担を減らしたくて、携帯は未だ持ってない。


「葵、明日休みだろう。買いに行くよ携帯」

「え?ダメダメだめだよお金ないもんっ」

「僕が払ってあげる」

「そ、そんなもっとダメだよ!」

「美和子さん(←うちの母)、そろそろ携帯を持つべきだって言ってたよ。何かあったら困るだろう」

「何それいつ話してるのうちの母と!てか名前呼び!?」


うわちょっと引いたんだけど。
確かにお母さんは昔から赤司君のこと好きだったよなー。

って赤司君携帯取り出してどこにかけてんの?


「……あ、美和子さん僕です。…はい、葵が携帯欲しいって――……」


…なにやってんのこの人。


「美和子さんに話した。明日買いに行こうだそうだ。三人で」

「……」

「何?」

「…ごめん、どこにつっこんだらいいのか分からなくて…」

「僕の隣を歩くんだ。みっともない格好してくるなよ」

「えーと…」


目の前で教室の扉がピシャって閉まった。


 
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