恋模様
□06
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授業が終わる。
お弁当持った。この後に備えて、足首を回す。
――キーンコーン…
チャイムが鳴る。号令が響く。
「れーい」
「ありがとうございましたー」
ダッシュ!!
目にもとまらぬ速さで教室を飛び出した私は、一目散に食堂を目指す。
私の教室からは決して近くはないけれど、だからこそ死ぬ気でダッシュ!
足の速さには自信がある。
食堂に飛び込むと、すでに数名の生徒たち。
マズイ…でもあのデカい青黒頭は…!
「青峰君!」
「?」
「席!席とって席!」
「あ!?」
「よろしく!」
「おい!」
急で理解不能ですって顔をしてたけど、私の必死さは伝わっただろう。
席を確保して座ってくれたみたいだ。
並ぶ列の人数からして、たぶん大丈夫。
よかったー
間に合ったみたいだ。
「ふぅー…」
「…どうしたんだよ葵」
青峰君がとっておいてくれた席に料理の乗ったお盆を置いて、自分用のプリンとケーキも置いて、心底安心しきった息を吐く。
青峰君は不思議そうに私を見てきた。
「限定二十食の定食、そんなに食べたかったのか?」
「あー、いや、赤司君の」
「なるほど…、てかお前、今日髪おろしてんだな」
青峰君は眉を上げて物珍しそうな顔だ。
縛ってる日がほとんどだし、当然の反応か。
「今日は体育も部活もないから。…へん?」
「えっ?いや、変じゃねーけど!」
「なら良かった」
「〜〜つか…あれだ」
「?」
「いいんじゃねぇの?そっちの方が…」
「…あぁ、そう?ありがとう」
なんで無駄にしどろもどろなの青峰君。
私もバスケ部に入ってからは、集まるときはみんなと一緒に、食堂でお昼を食べるようになった。
私は節約のためお弁当だけど。
そして今日は赤司様命令の限定定食をなんとしても用意しておかねばならず、こうして全力を尽くしたわけだ。
いいなぁ青峰君は。教室が近くて。