恋模様

□07
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休み時間中、自販機に寄った帰り。
庭にひときは大きな人影を発見。
あのデカさと紫具合は、誰だって間違うわけがない。


「あっくーん、どうしたの?」


私は庭で木を見上げてるあっくんに声をかけた。
あっくんは後ろを振り向いて、ちょっとキョロキョロしてから私を見つけた。


「葵ちん」

「何かあるの?その木」

「うん。猫がいるー」

「うそ、どこ?」

「あそこー。降りれないみたいなんだよねー。けど手を伸ばしても届かなくてさぁ」

「あっくんが伸ばしても届かないの?」

「うん」


それは高い。
よく見れば確かに、上の方に白いふわふわしたのが見える。
耳を済ましたらか細い鳴き声も聞こえる。
可哀そうだなぁ…。


「…よし、あっくん、私を持ち上げてくれ」

「葵ちんがとってくれるの?」

「うん。よろしく」

「わかったー」


あっくんが腰をかがめて、私の腰あたりに腕を回すとひょいっと持ち上げてくれた。
これでとどく…


「ぅおお!!」

「なに?どうしたの?」


こ、これは…!


「ヤバい!あっくんヤバい!超高い!超高い!すごい!あっくんいつもこんな景色見てるんだね!」

「俺はそこまで高くないけどねー」

「すごーいすごーい!感動ー!」

「猫はー?」

「あ、ごめんっ。もうちょっと前に出れる?」


位置的に、丁度猫の目の前に来た。
枝の上で弱々しく鳴いている猫。子猫と大人の間くらいの大きさ。


「大丈夫だよー、今下ろしてあげるからねぇ」


優しく声をかけながらそっとこちらに抱き寄せると、猫は大人しく腕の中に納まってくれた。
か…かわゆいな…


「あっくん、とれた」

「ほんと?」

「うん、見て」


私が両手で猫をはさみあっくんに近づけると、猫は彼の顔をペロッと舐めた。
あっくんは「くすぐったい」ってすぐに顔を逸らした。
こいつも可愛いな。

 
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