恋模様

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私は、同級生の中では忙しい日々を送っている方だと思う。

朝起きて、朝食を作る母の横でお弁当の用意。
お母さんが早朝出勤の時は作ってくれてあるのを一人で食べるんだけど、今朝は一緒に朝ご飯。
身支度が出来ると、赤司君と待ち合わせの交差点(すぐそこ)で合流、鞄を持たされる。

この日は朝練がないのでそのまま教室へ。
席について一息したら、すぐに携帯が震えた。

赤司君からメールだ。

"数学の教科書忘れた。貸して"

このタイミングでか!
座った途端のこのタイミングでか!
だるいじゃぁんてか私今日数学ないし。

"ごめん、今日は持ってない"

"誰かから借りて来い"


な、なん…だと…?

このお坊ちゃま…自分のミスを他人に拭わせる気か…!
もー…

…でも赤司君のミス。赤司君のミス。
ぷぷ…赤司君が物忘れ…!
口元が緩まずにはおれませぬなぁ。


「葵ちん、どうしたのー?顔ニヤニヤしてて気持ち悪いよ」

「!!」


登校してきたあっくんにつっこまれる。
いかん、残念が出てしまった。


「おはよあっくん」

「おはよー」

「ねぇ数学の教科書持ってない?」

「数学…持ってないなー。今日なかったよねぇ?」

「うん。だよねぇ」


仕方ない。他のクラスに行くか。
と思って立ち上がった。


「数学なら俺持ってるっスよー。使う?」


すると横からひょこっと出てきた教科書。
黄瀬君だ。
いやなんで持ってんのあんた。


「あー…ありがと黄瀬君。けどいいや、ごめんね、ありがとう」

「え、なんで?必要なんじゃないんスか?」

「うん、でもいいよ、使うの他の人だし、ありがとう」


ありがたいけど、断って教室を出る。
いかん。いかんのだよあのイケメンから借りるわけには。
せめて周りの取り巻きをなくしてから私に話しかけてくれ。


 
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