恋模様

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黄瀬君がバスケ部に入部した。
才能はあっという間に芽を出して、たった二週間で一軍に入った。

すごいと思った。
けど同時に、私の中での位置付けはさらに低くなった。

なんたって彼、自分出来るからって他人を見下してるんですよ。あれきっと。


ある日のこと。
二軍が試合に出かけることになった。
ピンチヒッターは黄瀬君とテツ君らしい。
入ったばかりだと言うのにすごいなぁ。

ひとまず見送りに行こうと思ったら、黄瀬君がいつもみたいに「朝比奈サン」て近づいてきた。


「朝比奈サンもついてきてくれるんスか?」

「ううん、私は行かないよ。見送り」

「えーなぁんだぁ」

「桃ちゃんが同伴するからさ。頑張ってね試合、出番あるかどうか分かんないけど」

「それなんスけど、なんで俺とあの黒子?なんスかね」

「何でって…テツ君は黄瀬君の指導係じゃん。二人でワンセットでしょ」

「まずそれが納得いかないんスよねー」


黄瀬君が呆れたため息を吐きながら言う。
テツ君が指導係になったのが不満なのは知ってたけど…。
あからさまに態度に出されると腹立つな。


「見るからに弱そうなのがなんで俺の指導係なのかなーって」

「それはないんじゃない?まず黄瀬君は入ったばかりで、言わば一年生より後輩の位置にいるわけだし」

「けど俺のが強いし、入って浅いからって文句言われるとこでもないし?抜かされてんのはそっちでしょって感じ」


……かっちーん


「その言い方はないんじゃないの?」

「え?」


私は頭に血が上って、黄瀬君を睨み上げた。


「みんなの努力も知らないくせに…!偉そうなこと言ってんじゃねぇ!!」

「ぅあ…!?」


出来ちゃうやつに出来ないやつの苦しみがわかるかぁボケぇ!!
その努力舐めんじゃねぇぞコラァ!!

思いっきり怒鳴って黄瀬君がちょっと怯んでたけど知ったこっちゃない!


「テツ君!」

「あ、葵さ…」

「コテンパにしちゃって!」

「え、…はい…」


バスに乗り込むテツ君を呼び止めて、多分すごい剣幕で言ったんだろう。
テツ君が若干引いてたことに気付くほど、私の頭は冷静じゃなかった。

黄瀬君なんて黄瀬君なんて…!
私の三軍(私のじゃないけど)を見下して笑ってるんだコノ天狗ヤロー!
今日の試合でテツ君目の当たりにして、その伸びた鼻へし折られちまえぃ!

荒々しく体育館に戻った私はまだ落ち着かなくて、そこにあるボールを拾って


「んがあぁぁ!!」


ゴール向かってブン投げた。
そしたら

――ガンッゴンッスポ
で入っちゃった。


「おぉー朝比奈ミラクルシュート!」

「お、おぉ…」


自分でもびっくり、まぐれシュートが決まってしまった。
同じ場所にいた部員からちょっとした歓声があがる。

いやぁスカっとするもんだミラクルシュート。


「はー…気持ちよかった」


私の機嫌は元に戻った(単純)


 
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