恋模様

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学校で、二階に上がるため階段に向かった。
でも不思議だった。
その階段を上がろうとする生徒が、なぜかみんな足を止めて遠くの階段に回っている。

何かあるのかと階段に向かってみて、思わずげぇっと顔をゆがめた。

ガラの悪い男子生徒が二人、階段に鎮座している。
怖っ。そりゃあみんな避けるわ。

私も避けたいところだったけど、片方の男子は顔見知りだったからすぐにとはいかなかった。
どう見たって注意すべきこの占領具合。みんな迷惑してる。


「…は、灰崎くーん…」

「あ?」


私は思い切って声をかけた。
誰かが言わなきゃ、誰も注意しようとしないから。
けど座ってる彼からギロリと睨まれて、隣の男子からも睨まれて、蛇に睨まれた蛙みたいに体が縮こまるのを感じた。


「なんだよ朝比奈じゃねーか」


けど灰崎君は、声をかけてきたのが部活のマネージャーと分かって、その瞳の鋭さを少し和らげてくれた。


「何の用だよ」

「用って言うか…みんな困ってるみたいだからさ、階段どいてあげてくれない?」

「は?別に通りたけりゃ通ればいいし。誰も通るななんて言ってねーし」

「いや通りにくいって、そんな両端に座られちゃ」


長身の男二人が足を延ばして階段に座ってるなんて、その間とか誰が通れるもんですか。
灰崎君は立ち上がると、


「ま、お前がどーしてもって言うならどいてやらねーこともねーけど」


と言いながら私の肩に腕を回してきた。


「その代わり、一発ヤらせろや。お前顔だけはいいし」

「あ、ごめん。どいてくれなくていいや」

「オイオイつれねーな。モテねーお前に声かけてやってるってのに」


あーもう苦手。ホント苦手このノリ。
いやな汗が額ににじむ。
さっさと切り上げよう。


「灰崎君、今日は部活遅れずに来てね」

「あー、行けたら行くわ」

「出た、日本語で二番目に信用ならない言葉」

「二番?一番は?」

「国民の生活が第一」

「んだそれ」

「ネットで言ってた」

「つまんねー。もっと面白い話ねーの?」

「いやお話に来たんじゃないし。教室戻っていい?」

「いーじゃんサボろーぜ一緒に」

「遠慮します」


さっきから顔を見ないようにして喋って、離れようと灰崎君の体を押してるんだけどびくともしない。
やっぱり注意なんてするんじゃなかった。
もういやだ。誰か助けて。

赤司くーん。あなただけだよ彼を一発で黙らせられるのは。
赤司くーん来てー……。

…わ、ほんとに来ちゃった。


「灰崎、邪魔になるから階段に座るのはやめろと言っているだろう」


開口一番、赤司君は適切に注意を促した。
誰かが密告でもしてくれたのかな?邪魔だって。
部の印象にもつながるし、副部長として放っておけないから来たってとこだろうか。

灰崎君の顔が途端に大人しさをみせる。


「はいはい。すみませんデシター」


そして私を離し、あまり反省の色は見られないけど、階段を上って行った。
その間ずーっと携帯を触っていた男子も一緒に。

 
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