恋模様
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水飲み場で、私は一人疲労回復ドリンクを作っていた。
ボトルに水入れて、粉入れて、バシャバシャ振っての作業を繰り返していると、誰か一人近づいてきた。
「葵ー、そこのドリンクもらっていいか?」
「大輝君。うん、いいよ」
喉乾いたあっちーって汗流しながらやってきた彼は、ボトルを手に取り一気に飲み干していく。
ところが、
「…ぶっふぁ!なんだこれ!うっす!?まっず!!」
数口飲んだところで味のおかしさに気付いた大輝君が、むせながら顔をしかめた。
水と粉を混ぜただけなのになぜ不味い?
と、なにが起こったのかすぐに理解できなかった私はしばし停止する。
そして気付いた。
「…あ、ごめん、それ分量間違ったやつだ」
「はぁ!?」
「ごめんごめん」
私は苦笑いを浮かべながら両手を合わせた。
いやぁ完全に私のミスだよ。
どうせたくさん飲むだろうからって、1リッターペットボトルでドリンクを作ろうとしたわけだけど、いつもの癖でボトル一本にドリンクの粉一袋しか入れなかった。
500ミリボトルに一袋の粉を、1リッターボトルに一袋。
そりゃあ薄くて不味いわけだ。
鮮やかな黄色になるはずの色も薄い。
事情を話すと、大輝君に呆れた息を吐かれる。
「なにやってんだよ葵ー。で、分量間違ってねーのは?」
「これなら大丈夫、はい」
「…おぉ、ほんとだ」
新しい、きちんと500ミリボトルで作ったのを渡して、大輝君はようやく喉を潤すことが出来た様子。
すると続いて、黄瀬君がこっちに向かってくるのが見えた。
ということは多分ドリンク飲むだろうと思って、私はこの不味い液体を紙コップに注いだ。
「葵っちー喉乾いたっスー。俺にもちょーだい」
「はい」
「サンキュー」
大輝君同様汗をぬぐいながら近づいてきた黄瀬君に、私はその紙コップを渡した。
快く受け取ってくれた黄瀬君が、紙コップを口に運ぶ。
大輝君は口元をニヤニヤさせていた。
それに気付かない黄瀬君が飲んだかな、というところで私は一言。
「あ、ごめん、それ検尿コップだ」
「ブフォー!!」
「「ぎゃはははは!!」」
黄瀬君が盛大に吹き出して、それを見た私と大輝君も大いに爆笑した。
元々の色と、味がおかしいのもあいまって思い込んだ黄瀬君が、顔を真っ青にしながら今飲んだものを吐き出そうと頑張っている。
「おげっ…ちょ、葵っち!これ…通りでマズ…」
「はははっ、ごめんごめん、うそうそ」
「へ?」
まぁ普通に考えれば検尿コップなわけないんだけど、引っかかっちゃうんもんなんだよね。
大輝君は笑いすぎて目に涙を浮かべてる。
黄瀬君は安心したやら腹立たしいやらで、笑いながら怒り出した。
「もぉーびっくりしたー。冗談キツイっスよ葵っち!」
「いやー面白いもん見せてもらったわ」
「面白くねーっつの!葵っち天罰確定」
「えーやめてよ(笑)」
「赤司っちー!ちょっと葵っち叱ってやってくださーい!」
「えーやめてよ!(怒)」
よりにもよって赤司君に告げ口かこいつ!
マジで検尿コップ置いてやるぞ!?