恋模様

□25
1ページ/4ページ


大輝君が部活をサボるようになった。
普段から彼のことを見ていない私には、何があったのかわからないけど。
前兆だったんだって、気付いたのは事が起こってから。

今日も姿を見かけてない。
一軍の体育館を覗いてみたけど、やっぱりいない。


「赤司君、今日大輝君来た?」

「いいや」

「そっか…」

「……。葵が気をもむことはないよ。持ち場に戻れ」

「でもっ」

「戻れ」

「………」


そんな言い方しなくたっていいじゃん。
心の中で不服を言いながら、渋々戻る。
途中、向こうからやってくるテツ君を発見。
私はすぐに駆け寄った。


「テツ君!」

「葵さん、どうかしましたか?」

「うん…大輝君のことなんだけど…」


私がその名前を口にすると、テツ君もその表情に影を差した。
やっぱテツ君でもわからないのかな…
と思うと、私もつい俯いちゃった。
そしたら、テツ君の手がポンッと肩に乗った。


「?」

「大丈夫ですよ。青峰君は、またすぐ戻ってきます」

「テツ君…」

「葵さんは、気にせず後輩たちを見ていてください」


力強く微笑んだテツ君の瞳に、ただ安心感を覚えた。


それからしばらくして、テツ君の言った通り、変わらない大輝君が戻ってきた。
さすがテツ君。
確かに私が気にするまでもなかったかも。
そこまで見越して私にあんな言い方したのかな赤司君。

大輝君の塞いだ表情が完全になくなったわけじゃないけど、とりあえず一安心だ。


 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ