恋模様

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もうすぐ体育祭だ。
今行われているHRでは種目ごとの選手決めをしているところ。
私は希望の種目に適当に名前を書いて、後はみんなで話し合うのをただ聞いていた。

話し合い自体には参加しない。
なんたって私、このクラスじゃ浮いてますから。
誰かさんの息吹によって孤立してますから。

こういった話は適当に進めてってくれればいいよ。
そう思って黙る私。

話し合いは順調に進んでいるのかと思いきや、クラス旗を作るという内容になったところでタイムアップ。
HRの時間が終わってしまった。
休み時間に入ったのでこの件は次回に持ち越しかと思いきや。


「じゃあー、朝比奈さんやってよー」

「え?」


蚊帳の外だった私にいきなりそんな声が飛んでくる。
言い出したのは仮面美人だ。

体育祭で使うクラス旗の作成は、わざわざ授業の時間を割いてまで設けてくれていない。
みんなで協力して放課後に少しずつ作りましょうね、といった具合の物なのだ。
ところがうちのクラスは体育祭の話し合い自体が遅れ気味のため、このクラス旗を作る時間自体が既に少な目。
それに誰もが放課後は部活があるため、やりたがる人がいないのが現状だ。

だから、私に回ってきたというわけだ。
私に押し付けてまとめようという腹づもりなわけ。


「適任じゃん。ねぇみんな」


仮面美人がクラスのみんなに同意を求めて視線を走らせる。

思ってはいたけど、仮面美人は女子の中でリーダー格だ。
いるよね、逆らったら怖い女子。そんな感じ。
そして取り巻きのつるむ女子。
完全標的にされたらしい。


「みんなも頷いてるし、朝比奈さんでいいんじゃない?」


いいわけないじゃん。
と言いたいところだけど、反論したって仕方がないというか揉め事を起こしたくない。
悔しいけど彼女には逆らうだけ無駄だ。


「私は別に構わないけど…一人じゃちょっと……あっくーん」


私の頼みの綱、あっくん。
彼しか味方がいない。
が、


「えーやだぁ。めんどくさそーじゃん」


彼はこういう人だった…。
うん、知ってた。知ってたけど…このタイミングでこれは泣けるな。

仮面美人がここぞとばかりに口の端上げてます。
あーもう。いいよもう。やりゃあいいんでしょ。


「いいよ私や――」

「でも葵ちんが困ってるなら、やってあげるよー」

「!ほんとに!?」

「うん」


うわぁあっくんいい奴!めっちゃいい奴!!
そしたら、


「俺も手伝うっスよ」


て、黄瀬君も手を上げてくれた。
…んぬん…
嬉しいような嬉しくないような…。


「人手は多い方がいいし。ね?」


この人何も気付いちゃいないのだろうか…。
女子が私を痛めつけるために言い出したことだから、黄瀬君がこちらの味方になろうとするのを黙って聞いてるわけがない。
案の定黄瀬君がそんなことする必要ないよって、女子が必死に止めてる。

私も話しをややこしくしたくないので、上手く言って黄瀬君の好意は断らせてもらった。



 
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