恋模様2

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グレーのシャツとブレザーに、黒のスカート。
真新しい制服には、一つのしわも入っていない。

新しい学校、新しい教室。
高校一年生になった時とはまた違った緊張に体を強張らせながら、新たなクラスで自己紹介。
新しい席に案内され、長いHRを終えるとまた、私の高校二年生初日も終えようとしていた。

私は転校生だ。
教室が解散状態となれば、誰かしら寄ってきてくれる、もしくは自分から誰かに声をかけにく、はずだった。

目の前の席の彼が、こちらを振り向くまでは。


「改めて思うと、感慨深いものがあるね。同じ教室は初めてか」


こんな偶然ってありますか…
まさか赤司君と同じクラス、しかも後ろの席なんて。


「…ねぇ赤司君、まさかとは思うけど…」

「かいかぶりすぎ。さすがに僕でも、転校生のクラスを操作することなんてできないよ」


ですよね。
てことは、今度こそ本当に偶然なんだ。
新しく入った教室に赤司君がいるとは思いもよらなくて、そりゃあ驚きましたとも。
中学時代、一度も同じクラスにならなかったのに。

窓際一番前の席に赤司君。その後ろに私。
二年生と言えば、クラス替えがあったとはいえ、みんなそれなりに友達が同じ教室にいるだろう。
そんな中友達が一人もいない私としては、誰か知り合いがいると言うのは助かること、だとは思うんだけど…。

なぜだろう…なぜだか安心できない。
中学時代のあのパシリが蘇ってきたからだろうか。


「葵、今日はもう帰るだけかい」


赤司君が荷物をまとめながら問いかけてきた。
私がうんと頷くと、鞄を持って立ち上がった。


「右も左もわからない状況じゃ不安だろう。校内を案内してあげるよ」

「え…赤司君、部活は?」

「今日はないよ」


確かに、今わかるのは自分の教室と職員室の場所くらい。
せっかくなので、ありがたく案内をしてもらうことにした。

赤司君に連れられて教室を出ていくとき、教室にいる生徒の視線を大いに浴びた。
それでもほとんど声をかけられなかったのは、まるで赤司君ならその役割は適任だから、と納得でもしているからだろう。

 
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