恋模様2
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「今から言うところにきてー」
と、突如黄瀬君に呼び出された私は鞄を持って家を出た。
もう夕刻を回っているというのに何事かと思ったけど、指定の場所は自宅からさほど離れていなかったので向かうことにした。
びっくりしたのもあって言われるままに市街までやってきたけど…。
目印の橋までやってきたとき、見つけた。
帽子かぶってるけど、あの背丈は間違いない。
私はその大きな背中に駆け寄った。
「…黄瀬君!?」
「葵っちー、久しぶり!」
「うそ…え、なんで?なんでこんなとこに…」
「京都で撮影だったんスよー。ついでに会えるかなーなんて思って」
黄瀬君はもたれていた手すりからピョンッと立ち上がり、ニコッと笑う。
うわ…相変わらずイケメンだな。大人っぽくなってさらにだよ。
久しぶりに会った彼を前にして、そんなことが一番に浮かんだ。
連絡は取っていたけど、実際面と向かって話すのなんて中学生以来。
「葵っちめっちゃ可愛くなってんじゃんビックリ」
あの頃ならさらっと流していたこんなセリフも、今は無性に照れくさくてつい視線をそらしてしまう。
「黄瀬君っ…撮影って、今日はモデルのお仕事だったの?」
「そー、部活は休み。葵っち全然俺に会いに来てくれないから、こっちからきちゃったっス」
去年のウィンターカップで顔を見せなかったことを根に持っているような言い方だ。
「葵っちお腹空いてない?」
「私はそんなに…」
「俺今日撮影でお昼食べてなくてさ、お腹空いたんスよね。何か食べにいこー」
「えっ」
「スタッフさんにオススメのお店教えてもらったんスよ。行こ!」
「ま、待って黄瀬君!展開早すぎっ。本当に私に会うだけにここまで来たの?」
撮影のついでとは言え、明日も学校があることを考えると、もう帰るべき時刻なはず。
それもスタッフさんと別れてまで京都に残って。
でも黄瀬君は当然のように「そうっスよ」と肯定する。
「わざわざ…?」
「うん」
「ホントに?」
「うん。…だって、俺葵っちのこと好きだもん」
「!!」
固まった私の腕を引いて、黄瀬君は歩き出す。
ちょっと強引にだけど、そのまま黄瀬君に飲食店へ連れていかれた。