アオハルデイズ

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翌朝、朝練のないこの日、学校が近付くにつれ四方から飛んでくる女子のおはよう!に、黄瀬はいつもの笑顔で答えながら、頭の中は一つのことでいっぱいだった。


葵には必ず何かある。
そう踏んだ黄瀬は、どこかで情報が得られないかと模索した。

一番手っ取り早いのは兄の幸男だ。
おそらく幸男が一番葵のことをよく知っている。見たところあの兄妹は相当仲が良い。
が、すぐに無理だと悟った。

あれだけ反対してきた幸男に葵のことを詮索するなんて、想像しただけで背中に衝撃が走る。
となれば同中の誰かだが、それを探るとなると葵にバレそうだ。
自分のことが探られているなんて分かったら、ドン引きされかねない。


毎度のことながら下駄箱に詰め込まれている手紙達を鞄に詰めて上履きに履き替え、顔を上げた黄瀬はその瞬間動きを止めた。
離れたところに葵の姿を見つけたからだ。
いつもなら駆け寄っておはよう、と言いたいところだが、今日はできなかった。

同じように上履きに履き替えている葵はこちらには気付いていないようで、すれ違う男子からふりかかる挨拶に挨拶を返している。
まるでさっきの黄瀬と同じ光景だ。


「おはよー笠松さん」

「おはよう」

「ねぇ今日暇?よかったら帰りどっか寄ってかない?」

「えっと…」


ボーっと突っ立っていた黄瀬だが、こんな会話が聞こえると、ムッとすると同時に駆け出そうとした。
しかし、目の前に立ちふさがった人物に阻害される。
その人物は殺気に満ちた瞳で黄瀬を睨みつけた。


「おう黄瀬ェ。テメー俺んとこの葵に告ったそうだな」

「え!?笠松先輩!?…いや…その……て言うか…なんで知ってるんスか?」

「っ!!」


今までで一番強い蹴りが黄瀬を突き飛ばした。
黄瀬は痛すぎて声も出なかった。


「ちょっとツラ貸せコラ!」

「うわっちょ…」


笠松は強引に黄瀬を人気のないところへ連れ去る。
途中、葵がごめんなさいと返事をしているのが聞こえ、ほっとしている黄瀬がいた。

 
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