アオハルデイズ

□12
1ページ/5ページ

翌日、一人で外出禁止令が出ている葵の元に一通のメールが届いた。
話がしたいという、黄瀬からのメールだった。

と言われても下手に外出の出来ない葵はしばし考え、学校の図書室で借りている本を返したいと名目を打って、親に学校まで送ってもらった。
帰りは練習の終わった兄と帰ると伝え、校庭で待ってる。と、黄瀬に返信をした。


(ここに来るの久しぶりだなぁ)
夏が本番に入ってからは来なくなったが、相変わらず木陰が涼しく、外にしては居心地が良い。
この場所がなければ、黄瀬のことを好きになることなんてなかっただろう。

そしてこんな罪悪感を抱えることも。

葵はいつもの場所に腰を下ろし、校舎の壁を背に空を仰いだ。


「……悪いこと…しちゃったよね……」


小さく小さく呟かれたその言葉は、誰の耳に入ることもなく、周りの空気に溶けて消えた。

黄瀬に好きだって伝えつつ、付き合えない。そう返事をしたのに、二年後と言う縛りを作った。
あの時の葵にはそれが精一杯だったのだが、今になって、なんて酷いことをしたんだろうと頭を抱えていた。

黄瀬はいつも、全力でぶつかってきてくれる。
好きだって気持ちが痛いほど伝わってくる。
それを実感するたびに、胸のどこかが押しつぶされるような気がしていた。


「……」


葵は自分の頬をペチッと叩き、気持ちを切り替えると黄瀬を待った。
練習が終わってから来るとしたらそろそろなはずだ。
そう思った五分後。お待たせっと手を振りながら黄瀬がやってきた。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ