アオハルデイズ
□初デート
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ベッド脇に座る葵の膝を枕に、黄瀬は心地良さそうな寝息を立てていた。
葵は黄瀬を膝に乗せたまま、静かに本を読み進める。
この日は、二人が付き合って初めてのオフ、つまり初デートの日だった。
もちろんどこに行こうか相談はした。
あそこに行こうかここに行こうか、まだ一緒に出かけたことがない二人にはいくらでも選択肢はあったが、結局しっくり決まらず。
最終的な決め手は、葵のこの一言。
「黄瀬君ゆっくり休もうよ。だいぶ疲れ溜まってるでしょ?」
この言葉で、じゃあ黄瀬の部屋で家デート。に決定したのだった。
別に買い物でも全然良かったのだが、実際疲れも溜まっていたし、葵の気持ちが嬉しかった黄瀬は、喜んで葵を部屋に招いた。
そこで膝枕をした途端寝息を立て始めた黄瀬を見て、葵は本当に疲れてるんだなーと思いながら、頭をそっと撫でる。
「………ん…」
黄瀬の目は、それからしばらくして自然と開かれた。
ボヤけた視界がくっきりしてくるに従って、意識も戻ってくる。
「おはよ」
葵の声かけで、完全に目が覚めた。
ここでようやく、黄瀬は自分が寝ていたのだと気付く。
「俺…寝てた?」
「うん、ぐっすり」
「うわ…ごめん」
「いっ…!ちょっと動かないでっ」
「!?」
目が覚めて頭を動かした黄瀬だったが、膝の上に仰向け状態で固まる。
ぎゅっと目を閉じてシーツを握る葵を、何事かと見つめた。
「ごめ…足、痺れてるの…」
「え、俺どんくらい寝てた?」
「ん…一時間くらい?」
黄瀬は申し訳なさでいっぱいになった。
が、今自分に出来ることは一ミリも動かないことだけ。
同時に、足が痺れても我慢して、起こさずずっと寝かせてくれていた彼女が愛おしくて仕方がなくなった。
きゅーっとくる足の痺れに必死に耐える葵が可愛くてどうしようもない。
(優しいなぁ葵ちゃん…。てか可愛すぎでしょ。やべー心臓ドキドキいってきた)
やがて葵は握っていたシーツを離し、痺れから開放されるとふぅっと息を吐いた。
「ごめん、もう大丈夫」
それを聞いた黄瀬は、肘をついて上半身を起こした。
それから葵の頬に手を添えて、キスをする。
しながらゆっくり葵の体を押し倒した。
何度かリップ音が部屋に響き、葵からかすかな吐息が漏れると、黄瀬は唇を離した。
そこで気付く。
「葵ちゃん、耳開けてたんだ…ピアスの穴」
「あぁ…うん。けど普段髪の毛で耳隠れてるしつけてても見えないから、最近は何もつけてない」
葵は思い出したように説明した。
開けたはいいものの、つける機会が滅多にないらしい。
黄瀬は何もつけていないなんてもったいない、なんて思いながらふーんと返事をした。
そしてパッと顔を明るくすると、
「出かけよっか」
そう誘った。
(このままベッドにいると我慢できなくなりそうだし)