アオハルデイズ

□男の子の恋バナ
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「…あ、葵ちゃんっ」

「黄瀬君」


休み時間、ジュースを買おうとしていた黄瀬と、移動教室の葵が、ばったりと顔を合わせた。


「次の授業、特別校舎っスか?」

「うん。黄瀬君は何飲んでるの?」

「つぶつぶオレンジ」

「あ、あたしもそれ好き」

「マジで?飲む?」

「うん、―――?」


黄瀬が飲みかけの缶ジュースを差し出して、葵がそれを受け取ろうとした。
ところが、葵が受け取る直前、突如現れた三本目の腕がそのジュースをかっさらっていく。
二人が揃ってハテナを浮かべる横で、男子生徒が横取りしたジュースを一気に飲み干した。


「え……ちょ、何してくれんスかあんた俺のオレンジ!」


黄瀬が叫ぶ。
男子生徒はジュースを飲み干すと、ギロリと黄瀬を睨みつけた。


「黄瀬おめー、さり気なく笠松さんと間接キス決めようとしてんじゃねーよ!」

「はっ…別にそんな…」

「いーのかなぁー、そんなことしててー」

「いいでしょだって…」

「彼女いるくせにー!」

「!!」
「っ…」


黄瀬がピタッと押し黙る。
葵も思わず視線を泳がせた。

そんな二人の事情を知らない生徒はもう一人増え、


「そーだよ黄瀬、彼女いるくせに笠松さんに近寄るなっつーの」


追い打ちをかけた。


「べ…別に彼女いるからって葵ちゃんと喋っちゃダメってことねーし!」

「自重しろって言いたいんだよっ。気安く葵さんに近づくな」

「そーだよ彼女持ちになったくせに相変わらず女子にちやほやされやがって!その上笠松さんまで…許さん!」

「はぁあ!?」

「彼女いる奴は彼女だけと仲良くして下さーい。じゃ、笠松さん行こう」

「え…」


行こう。と、始めの男子生徒が葵の肩に手を回す。
黄瀬は腸が煮えくり返りそうになったのを必死に抑え、ちょっと!と呼び止めた。


「何でお前が葵ちゃんと…!」

「俺ら一緒のクラスだし。ね?笠松さん」

「あ…、ぅん…」

「葵ちゃん!」


(何他の男に肩抱かれてんの!?)
黄瀬は視線で葵に訴えるが、


「えー…と……」


葵は何だかしどろもどろだ。

(…もしかして葵ちゃん…なんかテンパってる?)


「黄瀬、今後むやみに笠松さんに近づくの禁止な」

「!?」


最後止めの言葉を刺し、男子生徒二人は葵と共に離れて行った。
黄瀬は何か物言いたげに口をパクパクさせるが何も言い返せず、握った拳を震わせた。

 
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