アオハルデイズ
□幸兄と私
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桐皇に負けた日。
幸男は一人自宅に帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
葵の声に返事のみをした幸男は、そのまま二階へと上がっていった。
その様子を見た葵は、階段を上がる幸男の背中を無言で見つめる。
一瞬だけだが、兄の目が赤くなってことくらい、すぐに気付いた。
この日、二人が交わした会話は、これだけだった。
「…元気ないわね幸男。負けちゃったのかしら?」
「うん」
母親の問いに、葵が頷く。
「そう。残念。…そっとしておいてあげましょうか」
「そうだね」
「部屋まで励ましに行くつもりだった?」
「ううん。今日は、いい」
葵 は首を横に振り、またリビングのソファに腰を下ろした。