アオハルデイズ

□ジャージ
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黄瀬は今まで知らなかったが、葵は朝練がある日にバスケ部へやってくる。
朝家を出るのが早い兄のために、後から葵が弁当を届けるためだ。


この日、朝練も終わりみんな着替えを済ませた頃に葵は現れた。
部室付近にとどまっているバスケ部員に近付き、いつものように幸兄ーと呼ぶ。
幸男がその声に振り向くのだが、呼ばれてもないのに振り向くやつが一人。黄瀬。

ところが次の瞬間、


ばしゃぁぁああ!!


「……」


葵の制服がびしょ濡れになった。
何が起きたのかすぐに理解できなかった葵はその場に立ち竦む。

実際何が起きたのかと言うと、今葵の隣にある水道でふざけていた男子部員が、蛇口を上向きにして勢いよく水を噴射したため、たまたま通りかかった葵に見事かかったのである。

葵のシャツはびしょ濡れになった。
その場が一瞬静まり返る。


「あっ…ご、ごめ…!」


蛇口をひねった生徒が慌てて謝ろうと葵に近寄ったが、それよりもいち早く飛び出したのが黄瀬だった。
黄瀬は誰よりも焦った様子で葵に覆いかぶさると、


「全員葵ちゃんを見ちゃダメっス!」


そう叫んだ。
それもそのはず。なんたってシャツが濡れたのだ。という事は、透けて見えてしまうのだ。
下着が。

そんなもん見せてたまるか!と言わんばかりに黄瀬は葵を覆い隠す。


「おいこら離れろ黄瀬!」


と怒りを露わにする幸男には目もくれず、素早くブレザーを脱ぎ葵に被せ、腕を引いた。


「っ黄瀬君!?」


いきなり腕を引かれつんのめりながら、葵は今は誰もいなくなったバスケ部の部室へ押し込まれた。
ちなみに、幸男とすれ違いざまにしっかりと弁当を渡していた。


 
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