アオハルデイズ

□恐怖の創立記念日(後編)
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通話が切れた黄瀬は、おそらくこれ以上連絡を取るのは無理なんだろうと悟った。
その上で、葵同様鋭く前を見据えた。
横にいる幸男も強く頷いた。


「行く場所は決まったな。一階女子トイレからの道のりにそって、部室に行く」

「はい!」

「てめーはその女子撒いてから来い!俺はここで離れる」

「えぇ!?先輩それはないっスよ助けてくださいって!」

「知らねーよてめーでなんとかしろ!つーか俺まで走って逃げる必要ねぇから!部室に女子連れてくんなよ!?」

「ちょっと!」


非情にも幸男は姿を消した。
あーもーと嘆きながら、ひとまず自分はこの女子を撒いて、葵が通るであろうルートを予想し部室に向かわなければならない。
黄瀬は走る速度を一気に上げた。


「あ、ちょっと黄瀬君!」


女子にはとてもついて来れない早さだった。
その後も持ち前の運動神経を駆使して、黄瀬は急ぐ。



一旦大群を引き離すことに成功した黄瀬は、思い当たる場所を探しながら部室へと向かう。

しかし無情にも、葵の姿を見ることなく到着してしまった。
ご丁寧に関係者以外立ち入り禁止のバリケードを張ってくれているバスケ部員に礼を言いながら扉を開けたが、中には部員数名しかいなかった。


「葵ちゃん、まだ来てないっスか?」

「来てない。目撃情報は得られてるけど、捕獲してないみたい」

「捕獲って先輩…」

「むやみに探し回っても見つからねーぞ。だいたいお前も追われてんだろ?何かあったらここに連絡来るようになってるから…」

「いや、俺も探しに戻るっス。何か分かったら携帯に連絡下さい!」

「あ、おい!」


先輩の制止も聞かず、黄瀬は部室を飛び出した。
確かに広い校内をむやみに探し回っても、砂浜に落ちたコンタクトレンズを探すに等しいかもしれない。放課後だと言うのにこの賑わい。しかも相手は移動している。


「あ…そうじゃん」


黄瀬がひらめき、なんで今まで気付かなかったのか、逆に不思議になった。
そう、葵は移動している。
しかも追われているとなれば、その追っている大群を見つければいい。

大人数の男子生徒が大移動していればそれなりに騒がしいし目立つし、それなら見つけられる。
とりあえずそんな大群の目撃情報を聞き出しながら進めばいい。

黄瀬は急いで校舎の方へ戻っていった。

 
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