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最近の僕の一日は、朝食を作り、帆稜を起こす所から始まる。
女子高生とは思えないぐうたらぶりを発揮した彼女は、フレンチトーストを頬張りながら半分寝ている。今朝は四回殴った後、鼻をつまんでやっと起きた。彼女の中では、睡眠>食事なのだろうか。
「ソーセージは」
「食べる!」
食べるか、という言葉を遮り、彼女は僕の皿からソーセージを奪い去る。訂正しよう。肉>睡眠>食事。
「僕は朝練があるからもう出るよ」
そう言って立ち上がる。
「家を出る時は鍵を閉めろ。電気は消せ。水は出しっぱなしにするな。キッチン周りは入念に確認しろ。僕が帰宅した際散らかっていたら、お前の命はないと思え」
「征ちゃんそれ、本心で言ってる?」
「……行ってくる」
悔しい事に、彼女には僕の脅しは通用しない。
ちゅっ。
唇に感じる、熱と甘み。
「……」
「行ってらっしゃいのちゅー」
とりあえず僕は、適当にその辺にあった靴を、彼女の顔面に投げつけた。
×××
部活で疲れも溜まり、帰宅する。適当に鶏肉を卵とじにして、親子丼を作った。
部屋でだらだらしている帆稜を呼ぶ。返事がない。部屋のドアを開けたが、そこに帆稜はいなかった。
「あ、おかえりー!」
何故僕の部屋から出て来る。
「おかえりのちゅー」
そう言って顔を近付けてくるものだから、咄嗟によけ、彼女の首根っこを掴んだ。
「餌の時間だ」
「やったー、ご飯だぁ」
「あくまでも餌だ」
×××
風呂の時間だけは帆稜から逃れられると思っていた。いたのだが。
ガラッ。
「お邪魔しまーす」
平然とした様子で素っ裸になり、風呂場に侵入してくる帆稜。これにはさすがの僕も唖然とした。
「何故入ってくる」
「いいじゃなーい。シャンプーしてよ、ダーリン!」
誰がダーリンだ。無視して髪を洗う。
「征ちゃん、筋肉ごつごつだね」
「部活でトレーニングをしてるから、当たり前だ」
「魅惑のボディだね。私も痩せてると思うんだけどなぁ」
彼女をちらりと見る。上から87、56、89。心拍数は59回/分。同い年の年頃の男子と風呂を共にしても、全く臆していない。
初めてかもしれない。……僕を見ても怯まず明るく接してくる奴は。
「……洗ってやる」
「やったぁ!」
風呂場に体育座りをする帆稜。シャンプーを手にとり、彼女の髪の上で泡立ててやる。泡を流してやると、帆稜は僕の胸に頭をもたげてきた。
「ありがとう!征ちゃん大好きー」
「……薬でもやったか?」
「違うー、母性愛」
言葉の意味が逆なのではないか?そんな間違いがおかしくて、帆稜の頭を撫でてやり、くすりと笑った。

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