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日本列島を台風が直撃し、外は猛烈な突風が吹き荒れている。柄でもないが、僕はベッドでごろごろしながら読書に勤しんでいる。今日の練習試合が中止になって、午後に空き時間が出来たからだ。隣では帆稜が同じようにごろごろしている。彼女はLINEで友達とコミュニケーションを取っているようだ。
「ねぇ、征ちゃん」
帆稜が口を開く。
「何だ?」
「LINEゲームで対戦しない?負けた方は一枚脱ぐ」
「LINEゲームには対戦機能は付いてないと思うが」
「同じゲームを同じ条件でやれば公平でしょ?」
「それもそうだな」
僕は本に栞を挟み、体を起こした。
「いいよ、やろう」
「やったー!」
彼女はベッドから勢い良く立ち上がり、再び座った。振動で僕の体が少し浮く。
「それで、何のゲームをやるんだ?」
「んー、ぽこぱん」
「ぽこぱん?」
×××
LINEゲームの一種であるポコパンは、何色かの丸を、三つ以上指で繋げて消していく、シンプルなゲーム。一定以上消すと、画面上部にいる敵の動物が倒れ、スコアが加算される。長く素早く多く繋げるほど得点が高い。動物柄の丸を一番下まで落とすと、ボーナススコアがもらえる。
要するに、“たくさん繋げて動物を倒す”ゲーム。
「アイテムはなしだからね!」
使わなくとも勝てる。
「よーい、どん!」
カラフルな丸を次々と消していく。赤、青、緑、紫、黄色。昔の仲間を連想させられ、思わず笑みがこぼれた。
制限時間一分を終え、互いに見せ合う。帆稜の得点は……。
「……684980点」
「……729160点。僕の勝ちだ」
「うっわー、負けたぁ!」
そう言いながら、彼女はズボンを脱いだ。
「長めのTシャツで良かったわー。見てこの脚線美」
「“美”は言いすぎだ」
「えー、太腿とか美しいと思うんだけど」
「その自意識過剰をどうにかしてくれないか」
帆稜は何やらスマホを操作している。
「次はこれ!」
「まだやるのか?」
「どっちかが全裸になるまでやろうよ」
「仕方ないな」
僕も帆稜が示したゲームの画面を開く。
「……後悔するなよ」
「しませーん。私だって完璧だから」
ああ、そうだったね。君も完璧を極める人なんだっけ。
手加減は出来なさそうだ。
×××
自称完璧少女との勝負は長引いた。LINE POPやLINEバブル、ウィンドランナーなどを行い、衣服はお互い残り二枚ずつとなった。
現在僕は上半身裸で、ジーンズを履いている。帆稜はピンクのキャミソールとパンツという姿である。
「ここまで脱ぐとさすがに寒いわぁ。布団入っていい?」
「僕も入る」
二人して薄めの毛布にくるまり、スマホを操作する。
不意に、帆稜が僕のお腹を触ってきた。
「お肌すべすべだねー。筋肉凄いのに」
「そうか?」
「……あったかい」
帆稜は僕の首に腕を絡め、抱きついてくる。少し前の僕だったら完全に拒否していただろうに、僕は彼女の頭を撫で、額にそっと口付けた。
「ゲームは終わりにしようか」
「……うん」
さり気なく彼女の腰に手を添える。彼女は一瞬身を引いたが、拒みはしなかった。
ゆっくりと深く、帆稜の唇と自分の唇を重ねた。
×××
「征ちゃん」
「何だ」
事が終わり、一緒に浴槽に浸かっている帆稜が言った。
「征ちゃんも男なんだね」
「はぁ?」
「なんかぁ、目つきが凄かったよ。獣みたいだった」
「帆稜だって散々喘いでたじゃないか」
「それは言わなくていいのー」
僕の腕の中でぶつくさ言う帆稜。
「だって征ちゃんが上手だから」
少し顔を赤く染め、はにかんだ帆稜。
……今の顔は、ヤバい。
「ごめん、帆稜。もう一回ヤる」
「おええぇ!?」
どうした征ちゃん、と言いたげな口を塞ぐ。
「……何か今、ムラっとした」
そう言うと、帆稜は困ったような顔をして笑った。
「しょうがないなぁ」
僕達はまた唇を重ねた。
何度も何度も、愛を確かめるように重ねた。

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