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東京滞在二日目。
「クーラー下げて」
「トイレ貸してくれ」
「お客様に何も出さないって失礼だと思うんだが」
真のチームメイトは、楽しい。
「うるせぇ、ここは俺ん家だ!勝手にくつろ……、瀬戸、寝るな」
「いやぁ、だってこの座布団とふかふかのソファー」
「くつろげと言わんばかりのこの温もり」
「真夏に温もり求める奴がいるか」
瀬戸、原、山崎、古橋の四人と私で、真の自宅にお邪魔している。東京にいる間、真の家に泊まる事にした私は、好奇心から真のチームメイトを見たくなり、呼んでもらった。
想像以上に騒がしいのが来た。
「ザキ、お腹空いた」
「何で俺に言うんだよ。花宮ぁー」
「出さねぇよ!何も出さねぇからな!」
「帆稜もお腹減ったー」
わざと一人称を名前にして言うと、
「……クッキーあるから、食いたきゃ食えよ」
一瞬の沈黙。
「ツンデレだな」
「何、帆稜ちゃんに贔屓してんの」
「青春だな、花宮」
「真、きもい」
「うるせぇ!」
真が投げたクッキーの缶が宙を舞う。ぶつかる寸前で原ちゃんがよけ、爆睡している瀬戸の顔面にヒットした。
「……起きねぇな」
「昼寝の天才か」
原ちゃんが起きたらどうすんだよーと言いながら、真の腿を蹴り飛ばす。微笑ましいなと思いつつ、ソファの下に足を突っ込むと、何かに足が触れる。そっと手を伸ばし、引きずり出してみる。
「“本怖”じゃん……」
「何だそれ。……おお、見よう」
瀬戸が私の手の中にあったDVDパックを取り上げ、セットしようとする。
「ザキ、どうやんだこれ」
「俺に聞くかよ……」
「あ、貸して、出来る俺」
DVDは古橋から山崎、原ちゃんへと渡り、テレビの機械に吸い込まれていった。真もいつの間にかソファの下の床に座って、リモコンを構えている。
「花宮、再生して」
「言われなくてもそうす……」
「やだ」
「「え?」」
全員の目がこっちを向く。
「ごめん無理。死ぬ」
「帆稜ちゃん“本怖”無理なの!?」
「初対面の年上にタメ口出来る度胸あんのにか!?」
「それは普通だから。でもホラーは本当無理。悶え死ぬ」
「“本当にあった”から?」
私はこくんと頷いた。分かる?白目とか血走った感じとか、そういうのの怖い感じ。
「だーいじょぶ!これ本当はないから!さ、見よ。花宮」
「え、あ、ちょっと待っ」
瞬間、部屋の電気が消える。元々深緑色のカーテンを閉めていたので、昼間とはいえ真っ暗に近い状態。
「やっぱ怪談は暗くしないとねー」
私はクッションを抱きしめ、体育座りになり、臨戦体勢をとった。隣で真が、下らねぇと呟いた。

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